通されて入った内部では、近未来的な容器の中にパルプンテが入れられている。
そしてそれを、三人の科学者が見守っていた。
どうやら衛兵から申し送りはされていないようで、科学者がヒャダルコの侵入をとがめてくるが
ヒャダルコ聞く耳をもたなかった。
その時、その時点でどうすればいいかなんてのはわからない。
だけど、後になればわかる。そして後になった今、パルプンテを見送ったとき何をすればいいか、わかったと思う。
熱病にうなされたように自分の都合を並べる17歳に科学者があとじさった。
そりゃそうだろう。無手でも電車の中でしゃべっているヤマンバはこわいのだ。
ヒャダルコは、この熱砂の環境でも暑苦しいいでたちで
でっかい剣を提げているのだから。
「まだ間に合う」
勝手です。
「後悔したくない」
他人の都合を考えていません。
パルプンテを返してもらう」
……。
「いまさら何を言うか!」
怒り狂う科学者だったが、しかし前言撤回朝令暮改は人間ならしょうがない。
そして、目の前の人間が危険な種類の生き物だったら――
アーヴァインが銃を抜き、セルフィがヌンチャクを構えた
科学者は逃亡し、あるいはすくみあがった。暴徒に守られてヒャダルコは進む。
それにしても、正義というイメージから遠い主人公たちだよな。


パルプンテが囚われている牢獄は、巨大なチューブのような骨組みの中に透明な球体が抱えられているような物で
内部からも外は見えているらしく、近づくヒャダルコパルプンテが暴れた。
どうやら生きているらしい。
アデルはなんというか、彫像かと思えるほどがんじがらめに縛られていたのだが
これは多分、アデルが巨大で強靭だったことがあるだろう。
なんにせよ、巨大であるということは重くなることで
重くなればなるほど、自らの質量が自らを蝕む。
アデルを縛るためには巨大な牢獄が必要で
20年前の技術でそんな巨大なものを存続させるためには無重力の空間に飛ばす必要があった。
そして一度宇宙に飛ばしてしまえば遠慮なく巨大にすることができて
その結果、あんな大げさなことになったのだろう。
一方今回の魔女はM78星雲出身者のサイズではなく
エスタの対魔女技術も進歩しているだろうから
この程度の牢獄で済むと判断されたのだ。
それだけに操作も難しいらしく
これまで滅多やたらにパネルを叩くだけで数々の危機を切り抜けてきたヒャダルコをもってすら
牢獄は開放されようとはしなかった。
だからヒャダルコは壊すことにした。


え、えー!
中にいる人間にどんな影響が出るかわからないんだぞ!
それなのに壊したか。
このあたりからも少なくともヒャダルコが正気を失っていることはよくわかった。
でもまあパルプンテは無事で
しっかとすがりつきヒャダルコも抱きとめる
まあ、二人が幸せなら結果イズオーライということでオッケーですね。
「魔女でも……いいの?」
「魔女でも……いいさ」
ヒャダルコの回答に重みがあったのは
シド学園長とまませんせいを見てきたからだろうか。
何も考えていない、とは思いたくない。


二人の暴徒が声をかけてきた。
破壊活動を行ったことで全館の警備力が殺到してきたのだろう。
ヒャダルコたちがその声に応じて走り出すと
二人はもう退路の確保をしようとしていた。
今のところ警備兵は4人しかいないのだが
おそらく表にはもっといるのだろう。
と、そこにエスタの高官の服装をした巨大な男がやってきた。
男はヒャダルコたちに何も言わず、ただ行けと促した。
ここで騒動を起こされたくないのか
まさか若い二人の愛にほだされたわけではないだろうし
それにしても、セルフィとアーヴァインが簡単に武器を収めてしまうのも不思議だが
その疑問はヒャダルコが近寄ってその大男の顔を見たときに判明した。
(会ったことがある)
その大男に、である。
って待て! それ会ったことがとかいうレベルじゃないぞ。
その大男は、ウォードだよ。
ラグナと一緒にアデルを倒し、その後エスタの高官になっていたんだ。
ウォードは人格的に見て、ゼルのお母さんの告ぎ、ドープ駅長と同じくらいに信頼されそうな気がするし
だからセルフィもアーヴァインも武器を収めたのだろう。
それにしてもエスタの高官にウォードがついているのなら
もしかして、これまでラグナっぽいと失礼な評価をしていたエスタ大統領は
本当にラグナなんじゃないだろうか。
というか、多分そうだ。
なんてこった。ゲームってのがそうだとは知っているが、みんな関係者かよ。
呆れてものも言えないよ。