そこにゼルが飛び込んできた。
多分ヒャダルコパルプンテはいい雰囲気だったのだろう。
たったこの六人のなかでただ一人
そういうものにかかわりのないゼルはうろたえてしまう。
しかしニュースは重大だった。
エスタのラグナ大統領から連絡があり、アルティミシアを倒すためにSeeDを雇いたいのだという。
なんだよ。お前らでなんとかすればいいじゃないか。
とは思うものの、師匠のことを考えたらあれから17年たった古強者よりヒャダルコたちのほうが使えるか。
というか大統領が先陣に立つわけにはいかんわな。
「……パルプンテを取り戻すためのワナかもしれない」
おーいヒャダルコ。お前は実の父親を疑うのか。
まあ、大統領がラグナだっていう保証はないんだけど。
でもそれなら、魔女記念館でやすやすと行かせたりはしなかったんだぞ。
「それが……無線で話した男の名前がキロスってんだ」
ヒャダルコたちは混乱する。ともかく行ってみようという話しになった。


石の家にはまませんせいが戻っていた。
まませんせいは、立派になったヒャダルコの姿を見て感無量のようだった。
「小さくて、いつもエルオーネを探して泣いていたヒャダルコ……」
そしてまませんせいは自分の話をする。
「あれは……そう、13年ほど前でしょうか。私の物語が始まりました。
 私は……子どもの頃に魔女になりました。そして13年前、もう一度魔女になりました。
 あの日……この場所で、私はまさに力尽きようとしている魔女に出会いました。
 私は、その魔女の力を自分の意思で受け継ぎました。
 その魔女は、私のちいさな子どもたちに恐怖を与える存在でした。
 だから放っておくわけには行きませんでした。でも、それが……
 それが私の苦しみの物語の始まりでした。
 今、私の苦しみの物語は終わりました。どんなにつらい物語にも終わりがあることを知りました。
 だから……ヒャダルコ
 あなたの戦いの物語を終わらせなさい! それが誰かの悲劇の幕開けだったとしても!」
えーと、つまり?
魔女の力は、誰かが持たなければならない。
その人はもちろんつらい目にあうだろう。
しかしイデアは、誰かほかの人間がそれを身につけてまた誰かを傷つけることを望まなかったし
キスティスやらセルフィやらエルオーネが自分と同じように魔女となることもいやだった。
だから二人ぶんの苦労を背負い込んだと。


いま、子どもたちとパルプンテの犠牲がイデアの不幸を終わらせてくれた。
それは単に、次の世代に不幸を先送りにしただけに見えるかもしれない。
でも誰かが担わなければならない不幸であり、伝える相手にそのつよさがあるならば
怯えることはなく、自分の幸せを求めるべきなのだと言いたいのかもしれない。
考えてみたらまませんせいも苦労人だよな。
だからこそ、このような無責任ともいえる意見を言えるのだろう。
でも、ヒャダルコはどうだろう。
まませんせいは子どもの頃魔女になって
ずっと苦しんでいて、もう人生も折り返しもすぎてようやく他人に渡すことができた。
もしパルプンテの中の魔女の力を誰かに渡すことで幸せになれたとしても
その道を17歳で選んでしまってはダメでしょうという気がする。
でもここでイデアがそう言ったということは
誰かに継承させて終わるという可能性が濃厚になってきたのか。
それは後味がよろしくない。


まあ、とにかくラグナに会いに行こう。
情報を得て計画を聞いて、それからだ。