石の家のあたりは春なのだろうか。くずれた廃墟からは一面の花畑が見渡せた。
これはなんとなく、オープニングでパルプンテがたたずんでいた花畑に思えるが
もちろん気のせいだろう。
珍しくたまが画面の端っこにいる。
改めてみるとなかなかいい感じね、というキスティス先生の正直な感想に
ヒャダルコが珍しく同意した。
ヒャダルコが自分のまわりにはりめぐらせている壁をものともせず
 ぐいぐい中に入ろうとするパルプンテ
いきなり先生が通信簿を読み上げました。どうしたんだこのメガネ。
パルプンテにはかないません、と思ったわ」
「あとはヒャダルコが100%保証つきの場所を良しとするかが問題だったけど……」
先生は腕を組む。
「意外とあっさり降伏したわね」
先生はやはり子どもの頃からヒャダルコを見ていただけあって
ヒャダルコのプライド(に見えた意地)に気づいていたのだろう。
だから、パルプンテがやったように全面的な愛情ではダメだといちど結論づけたことがあるのだと思う。
それが簡単にヒャダルコをとろかせたことがそれほど意外だったらしい。
それにしても、現実の世界では、Aさんになびかなかった男がBさんになびいた理由は
外見とか性格とかそういうものに帰される場合が多いと思うのだが
性格はアレだとしても、現実離れした美貌をもつパルプンテを前に
そういうところに原因を求めないのは先生自身が自分の美貌をよく知っているからか。
考えてみたらファンクラブができてる女だったか。
まあ、ゲームで「私はブスだから……」とやられても疲れるだけだが。


さてはて、無償の愛情で城攻めを成功させましたなと褒められたものの
パルプンテにはどうかなあと首を振る。
恋の当事者は、不安なもんですか。
そういうことを絶対にしないタイプだった男が国と喧嘩して迎えに来てくれても
やっぱりまだ不安だとおっしゃる。
しかし、もと教育者はそれを否定してくれた。
ヒャダルコは変わった、としみじみと述懐する。
「頭の中はパルプンテでいっぱいて感じ。試験前じゃなくてよかったわね」
じゃあごゆっくりとキスティス先生も、ついでのたまも気を利かせて去ってしまった。


「どうなっちゃうのかな、わたし」
気を利かせてもらったのに、パルプンテは甘い時間に浸る気分ではないらしい。
ヒャダルコも必死で慰めるが
「むかしからよい魔女はたくさんいた。イデアもそうだった」
そのイデアにしても、アルティミシアにのっとられたらああなってしまったわけですから
慰めとしては片手落ちだとしかいえない。
その不安はパルプンテを苛んでいる。
「こんどは何をしちゃうんだろう。
 世界中を敵に回して戦うのかな」
こわい、と呟くその姿にヒャダルコは決意を決めた。
世界中を敵に回しても彼だけは味方でいるつもりらしい。
(俺は……そう、魔女の騎士)
結局最後の進路がサイファーと一緒になってしまったようだが
プロ野球選手に憧れて野球を練習した人間と
野球が好きで上手だったからプロ野球選手になった人間はやっぱり違うんだろうか。
でも、やることは同じであって、サイファーのやらかした面倒を見てこなかったのか。
お前のレベル、今はもう100なんだぞ。


それにしても雲行きが怪しくなってきた。
普通なら、「そんなことにはならない! アルティミシアは俺が倒す!」とか言ってくれてもいいと思うが
そもそも決意を口に出したりしないし。
背中を向けてしまったヒャダルコにがっかりしたのか、パルプンテは続ける。
もしも、の話だった。
もしもパルプンテが暴れ者になったら、当然SeeDは倒しに来るだろう。
「SeeDのリーダーはヒャダルコ……そして……そしてヒャダルコの剣が私の胸を……」
それどころか炸薬つきです。刺さって爆発します。
「でも、ヒャダルコならいいかな。ヒャダルコ以外ならやだな」
えー、そうか?
まあ、ゼルに限界HPを超えても12秒間ずっとパンチ頭突きパンチ頭突きをやられるのはいやだろうし
セルフィに成層圏まで打ち上げられるのもいやだろうし
アーヴァインに蜂の巣にされるのもいやだろうし
臭い息を食らってから次元のはざまに叩き込まれるのももっといやだろう。
そうなるとヒャダルコか。ヒャダルコなのか。消去法ならそうなるか。
「俺が倒す魔女はパルプンテじゃない」
ヒャダルコはその不吉な想像を打ち消した。
アルティミシアを殺してしまえば、もう怯えなくて済む。
しかしそんなことはパルプンテも考えていた。
考えた上で絶望しているのだ。
アルティミシアの本体は未来にいて、影響力だけ過去にさかのぼってパルプンテを操る。
どうやって、パルプンテを傷つけずにパルプンテの内部のアルティミシアだけ斬るというのか。
それは無理難題で、しかしヒャダルコはいつものようにヒスを起こしたりしなかった。
考える。考えるから信じろと。


パルプンテはそれでも一案を出す。
いい案が思い浮かぶまで、やっぱりエスタの施設にこもっていた方がいいのだろうかと、
それをヒャダルコは切り捨てた。どうせまた彼が助けに行くだろう。
パルプンテは俺のそばから離れるな」
それを聞いたパルプンテはとても嬉しそうで
その言葉が始まりだった、と言う。
そういえば、イデアの怪獣に襲われて一人で何もできなかったパルプンテ
ヒャダルコがそう言った事でパルプンテというヒナ鳥に対する刷りこみが行われたんだったな。
しかし刷り込んだ親鳥はすっかり忘れていて
すねたパルプンテに対して
「いや、きっとこれは師匠のせいだ。それで忘れてしまったんだ」
便利だなー、師匠
ともあれパルプンテは元気になった。
元気になって勇気ももらったのか、怖い夢の話を始めた。


「夢、見たんだ。こわい夢だったんだよ
 ヒャダルコと約束するの。一緒に流れ星を見る約束なの」
そういえば、SeeD試験のパーティーの時、ヒャダルコが見つけた流れ星を追って視線を落としたら
そこにパルプンテがいたんだったか。
よく覚えているな、女ってのは。
当然ヒャダルコは師匠のせいにするでしょう。
「おしゃれして、もらった指輪もつけたの。
 でも、さあ、お出かけって時になっても待ち合わせ場所、思い出せないの」
夢の中のパルプンテは、重い出せなくても必死になって走ったという。
山、砂漠、草原、ティンバー、バラム、ガルバディア……広いな、範囲! ラグナロクを使ってか!
結局見つからず、叫んだら目が覚めたという。
「会えなかったのは…… パルプンテが待ち合わせ場所わからなかったのは……
 ちゃんと約束しなかったからだ」
そうか? それほどの間抜けか。
「そっか」
えー! 納得してる! そうだったのか。
「ここにしよう」
この花畑で。あー、それでか。
それでオープニングに続くわけですな。
てことは、エンディングではきっと離れ離れになって……
師匠のお陰で二人とも大事なことを忘れてしまって……
オープニングの使いまわしのあの映像で、二人はもう一度会えるのか、会えないのか。
二人にいいことが起きるといいですね。