ふと疑問に思ったのだけれど
どうして他の4人とまませんせいはヒャダルコを追い抜くことができたのだろう。
彼らが先発していたのならわかるが
エスタに向けてまませんせいの護衛をするという一大事にヒャダルコの判断を聞かないとは思えない。
まあ、ヒャダルコはかなり骨抜きになっていたけれど
表に出さない奴だから、相談するくらいはしたはずだ。
つまり、まませんせいがエスタに行こうと思い立ちバラム・ガーデンに連絡を取ったとき
すでにヒャダルコパルプンテをつれてF.H.の橋を歩いていたのだろう。
『おーい、おーい、いいんちょー!』
セルフィに呼び出されても応答がないヒャダルコに不思議がる一行に
カドワキ先生が「そういえばパルプンテもいないよ」と報告する。
あー、あいつ先走ったな!
もうそろそろヒャダルコの性格を把握しているみんなは別に驚かないが
それでも危険なエスタにヒャダルコが行く前に合流しないと
自分が何の気なしに師匠を憑依させた瞬間に
ヒャダルコがピンチに陥るということも考えられる。
どうにかして追い越さなければ。
そういう話になったはずだ。ちょっと再現してみよう。


口火を切るのは当然ゼルである。
「追うっきゃねぇだろよぉ! こうやって話してる時間があったらよぉ! ゲッハハハハハ」
もちろんセルフィは賛成する。
「そうだよ! いこう! ゴー!」
アーヴァインは基本的に考えていない。
「僕はセルフィについていくからさ〜」
慎重なのはキスティス先生だ。
「そんなこと行ったって、ヒャダルコは大急ぎなんだからよっぽど早く歩かないと」
セルフィは言っている意味がわからない。
「でもパルプンテを背負ってるんでしょ〜? 簡単に追いつけるんじゃない〜?」
じろりと横目で睨むキスティス先生。
しかし先生のいいたいことはまませんせいが代弁してくれた。
「昔のセルフィは、どこでもすぐに寄り道しちゃう子だったけど今は大丈夫?」
アーヴァインが笑う。
「ぜんぜん大丈夫じゃないね〜」
まませんせいの不安は続く。
「それにゼルも、昔から拾い食いをしておなかをこわしてたけど」
「なななにを言ってるんすか! もう、そんなやわなハラじゃないっすよ!」
「キスティもみんなをまとめようとして却って混乱させることがあったけど」
「……ドウセ私ハ教師シッカクダカラ……」


となるとやはり、魔女の力で飛び越したのだろう。
魔女の力をもつイデアのことだから
擬似魔法ではちょっと浮くだけのレビテトでも、びゅーんと飛べるのかもしれない。
たぶんヒャダルコが眠っているパルプンテに話しかけているときに
舞空術で飛び越していったのだろう。
あるいは、もっとファンタスティックな手段として
ガルバディア・ガーデンで一度倒されたあと議事堂にうつった
あの「とぷん」という影を伝わって移動する術を使ったのかもしれない。
そもそもF.H.にバラム・ガーデンがいることを知り
そこまでやってこれるイデアのことだから
F.H.の長い橋を渡らずに済む方法を何か持っているのだろう。
もちろんエスタでそれを使用しないのは
未知の土地だからである。
それにしても、奥さんがバラム・ガーデンに戻ったときに
シドは一緒に戻ったのだろうか。
知る方法はまだないが
なんとなくシドの中ではガーデンとの縁は切れている気がする。