研究所から出たら、技術者とムンバが待っていてくれた。
あんな騒ぎなのにぼうっと突っ立っていて平気だったんだ。
エスタって不思議な場所だ。
博士の助手がやってきたが
彼も反アデル派の仲間だったらしい。
「下で派手にやったようですが
 この研究所を離れるにはちょうどよかった」
その言葉を技術者が聞きとがめた。
どうしてこの研究所を離れることになったのか。
もしやアデルがここや博士に見切りをつけたのか。
博士に、ならありうると思う。
やはり問題は博士だった。
「ルナティックパンドラよりちっちゃな……ちっちゃなオモチャを見つけたらしいです」
博士の興味の対象はエルオーネに移ったという。
未来の魔女アルティミシアも羨むという時間遡行の力は
この時期から現れていたのか。単なるロリコンか?
エルオーネの名前を聞いて当然ラグナは気色ばんで居所を尋ねるが。
助手は知らないらしい。知っているのはオダイン博士だけだという。
研究所のオダイン博士のもとに戻ろうとするラグナを助手と技術者が引きとめた。
アデルに対抗する動きをするのなら、協力を惜しまないという。
まだ三人はエスタのことをよく知らない。だからキロスもそれには乗り気になった。
しかしラグナは恩を受けるだけでは気がすまないと
彼らのレジスタンス活動も手伝うと言い放った。
しかし、肝心のアデルの名前が一文字しか合っていないことをキロスに冷静に指摘されると
ジャーナリストの鑑のようなことをのたまった。
「名前なんかどうだっていいんだ! ハートがしっかりしてりゃなんだって大丈夫なんだ!」
今後ティンバー・マニアックスの記事は信じないことにしよう。
しかし技術者はほだされてしまった。
頭のいい彼らはこういう得体の知れない勢いを羨ましがるのだろう。


部屋に戻ったらバカ殿はいなくなっていた。
となれば、月刊武器創刊号を探すのみだ。
そしてすぐに発見する。どれどれ。
アダマンタイン×1は持っているな。
竜の牙×4はわからん。見かけたこともないかもしれない。
波動弾×12もおなじ。
まあ、これらの武器が手に入ったら使わないように気をつけることにしよう。
エレベーターを使って降りた先にはバカ殿がいたが
警備兵もいておそいかかってきた。蹴散らす。
「何でおじゃる! エルオーネなんか……知らないでおじゃる」
お前、嘘つくのヘタだな。
しかしバカ殿はすこし考えて前言を撤回した。
「……うそでおじゃる! エルオーネ、知ってるでおじゃる!」
威してもいないのに。
もしかして今のはほんとに『自分は知らない』と思ってたわけか。
なんてやつだ。大物だよ。
そして研究成果を信用してはいけない種類の人間だ。
エルオーネはオダイン博士の研究所にいるらしいのだが
ラグナはその説明をされてもさっぱりわからなかった。
そこで手っ取り早く道案内はキロスに任せてしまう。
ヒャダルコが成長したようにラグナも成長しているのだ。
FF8ヒャダルコだけじゃない、みんなの成長物語だが
27歳にもなっているラグナにしても成長の余地がある。
美しく希望が持てる話じゃないか。
しかしこの親子の場合は
もとがどうしようもないのが、何とかマシになる話なので
周囲の心労や迷惑を考えると今ひとつつきぬけた喜びはないのが切ないところだ。


車でバカ殿の研究所にやってきた。
どうやら技術者が運転してくれていた車から勢い余って飛び降りたらしい。
なにその西部警察
その結果、研究所に乱入することになりエスタ兵と戦闘になってしまった。
まったく悪びれないところも西部警察だ。
ラグナがエルオーネを救うという目的は疑いもなく善いものだが
まったく事情を知らない人間が見ると相当なタマだよなこの男も。
まったく話は変わってふと思ったのだが
それぞれドローはなつケアルをしたのに
キロスは400回復したがウォードとラグナは60くらいしか回復しなかった。
これはなんでなんだろう?
ほとんど魔力は同じなのに、だ。
戦いが終わって奇妙な椅子に座ると
それはひとりでに浮かんで、パイプの中を走り3人を運んでいった。
そこに運転してくれた技術者がようやくかけつけたが一歩遅かったね。
さっきの物音で他の警備兵がやってこなければいいね。
それが彼を見た最後の姿でした……。
なんてことにならなければいいね。


ガラスの中でエルオーネが泣いていた。声は届かない。
ラグナはパネルをメチャクチャに押した。
この、やたらめったらに押せてしまう精神力は
しっかりとヒャダルコに受け継がれている。
しかし画面にはエラーの文字が出た。
D地区でもバラム・ガーデン衝突回避でもとにかく目的は達成できたヒャダルコ
この点ではラグナを越えたようだ。レインの遺伝子のおかげである。
しかし三度メチャクチャに押したら
なぜかロックが解除された。
椅子を降りてエルオーネのもとに駆けつけた。
「ラグナおじちゃん!」
よかった、よかった。
ここでどうやら夢が終わるようなので
ちょっと状況を整理しなおそう。
これまでは、エルオーネは魔女アデルの失脚によって
穏便に返却されたと思っていたが
ラグナに救出されたのが実情だった。
つまり、俺がずっと思っていた
エルオーネはエスタから平和的に戻ってきたが
ラグナはそれを知らず諸国を放浪し
その間にレインが病死するという流れではなかったのだ。
ラグナはエルオーねを救い出した。
そして、何かの事情でエルオーネだけをレインの元に返しラグナは帰らなかった。
だから、レインの死によってエルオーネと幼児ヒャダルコは石の家に引き取られた。
どうしてラグナがウィンヒルまで戻らなかったか?
対アデルのレジスタンス活動に参加したからだろう。
もしかしたら、アデルもラグナのデスペラードを食らったのかもしれない。
自分を見もしないで、大量の弾薬を降らされる恐怖を味わったのかも。
ミンチにまでばらばらにされたから行方不明なのかも。
なんだかアデルがかわいそうになってきた。