またまた舞台は変わってゼルたちである。
それにしてアーヴァインはどこにいったのだろう?
狙撃の場所にじっとしていたのならともかく
実際にイデアに銃弾を撃ち込んでいるのだが。
彼はSeeDではなく魔女暗殺は彼の意志ではなく
責任はすべてシド学園長とドドンナマスターに負わされて釈放されたのだろうか?
考えてみればイデアはガーデンを接収しようとしているが
それはガーデンの兵士たちも利用しようとしていると考えるのが自然だろう。
では実際に自分に向けて引き金を引いたアーヴァインであっても
今後は自分の兵士の一人として遇することにしたのだろうか。
もしそうならヒャダルコたちとの戦闘は
イデアにまったく恐怖を与えなかったことになる。


師匠がいなければ、ゼルは単なるちょい強い兵士でしかない。
さんざんに痛めつけられたところをセルフィがケアルで回復してくれたのだが
ドロー、ケアルってゼルからケアルがドローできるのか。
「ダメね。ここ、まほうの効果を抑えるフィールドがあるみたい」
キスティス先生が冷静に指摘した。
ああ、なるほど。手持ちのまほうは使えなくて、今度はドローを試してみたのか。
扉が開いて、ヒャダルコを運び出したのと同種の怪物が入ってきた。
しかしドジらしく転んで荷物を投げ出してしまう。
警備の声にびくりとしていた。
入ってきたのはいやな感じのヤツで、その怪物を蹴り倒した。
ゼルなら助けるよなここは。
銃がなければ衛兵などゼルの敵ではない。
警棒を難なくおさえると、衛兵は捨て台詞を残して逃げていった。
セルフィが怪物にケアルをかけてあげる。
この怪物は人間に比べてHPの総量が小さいのだろう。充分効果があったようだ。


さてはて相変わらずサイファーさんが拷問しています。
「SeeDとはなんだ。なぜ魔女に抵抗する?」
そう。それはナゾだった。
最初の仮説は、SeeDというのはシドが国家転覆をたくらむための私兵だと思っていた。
しかし、ガルバディアを掌握しようとした魔女イデアに対してシドは採算度外視の攻撃を仕掛けた。
さらにイデアはSeeDを知っていた。
この『知っていた』が特殊で
いま拷問しているように、イデアはSeeDがなんなのかは知らないのだ。
ただ『腐った庭』に『撒かれた』種であるというだけで警戒している。
つまり、イデアにとっては『腐った庭』であるバラム・ガーデンか
それを『撒いた』シド学園長を警戒していることになる。
ほんとうにシド学園長はいいものだったのだろうか。
FF8はシリーズ最悪という評価を受けているらしいが
その理由はてっきりラスボスがシドだからだと思っていた。
でも、シドがいいものとはどうしても思えない。
ヒャダルコにとっても謎なのだ。とてもサイファーに教えてやれる情報などない。
そこに伝令がやってきた。
サイファー様、ガーデンへのミサイル発射準備ができたとの報告です」
えー!
どのガーデン?
聞く前からサイファーは教えてくれた。
「反魔女軍のSeeDを育てている罪でバラム・ガーデンは破壊される」
……やっぱりそっちか。
「俺もあそこで育ったから少々名残惜しいがイデアが決めたことだから仕方ないってやつだ」
「……やめろ」
「ガーデン破壊後はSeeD狩りが始まる。俺はイデアの猟犬となっておまえらを追い回してやるぜ。
 楽しみだろ、ヒャダルコ。それまで死ぬんじゃねえぞ!」
お前、Disc1では自分以外何も信じぬ認めぬ媚びぬの俺サマだったじゃないか。
作戦行動を無視して電波塔に走っていったお前を
俺は実は殺してやりたいと思ってたんだぞ。
それが今ではなんだ。
イデアに少年の時代に別れを告げろといわれたら
そんな俺様主義をかなぐり捨ててイデア至上主義者に鞍替えですか。
みっともない。
実際に大人になって他人に従うことが多くなっても
決して譲れないものはもっているはずなのに
イデアのいうことに盲従しちゃってるサイファーみっともない。
悲しいなあ。ブチ殺してやりたいよ。
あれ? 結局殺してやりたいという感情は変わらないのか。


サイファーが立ち去り、しかし尋問は続けられる。
いつまで続くかわからない中、ヒャダルコは楽になりたいと思い始めていた。
危険な兆候だ。そこで追い討ちをかけるように二択を選ばされる。
『これで人生終わってもいい』
『嘘ついて生き延びたい』
前者のほうがかっこいいのだけれど、せっかくヒャダルコが見せた弱さを大切にしてやりたい。
後者を選ぶことにする。所長に向けて嘘を開始した。
「花」
SeeDの本当の目的は、世界中に種をまいて世界を花でいっぱいにすることである。
なんだそりゃ。
なんだそりゃ。
なんじゃあそりゃあ!
プレイヤーである俺だけでなく所長も信じていなかった。そりゃそうだ。
しかしヒャダルコはつづける。嘘をつき始めたのなら覚悟をもって押し通す。
わかってるじゃないか。
「花を見ると多くの人間は戦意をなくす」
「戦意を消してどうする? 世界を平和にするのがSeeDの目的? だまされんぞ!」
ちがうちがう。戦意を奪ってふぬけになった国に攻め込むんだ。
「なんだと?」
所長は少し信じたようだった。
いま、ガルバディアの人間は相手を屈服させることだけを考えている。
もしSeeDの目的が世界平和だとか言われたら絶対に信じなかっただろう。
しかしどのような手段であっても相手を征服することが目的だといわれたら
その動機は信じてしまう。
本当に花を見ることで戦意をなくすのか?
そこで疑問は残るだろうが
何しろ師匠を唯一実用化しているような手段を選ばない軍事集団である。
一見荒唐無稽の花満ちる世界作戦であろうとSeeDのみに見えている採算があるのかもしれない。
そう考えれば、単に所長一人の判断で切り捨てていい話ではなかった。
所長は報告のために立ち去っていった。これでしばらくは苦痛から逃れられるだろう。
ヒャダルコは安堵して意識を失った。