「とにかく逃げ出すなら今のうちだ」
しかし地下の扉は埋まっているんだぞと反論するが。
そりゃそうだとアーヴァインは気にしなかった。
この刑務所は今は潜っているからね。
なんと。
この刑務所は地下に潜ることができるのか。
何しろ一度はいったら生きて出られないという黒い噂の刑務所だから
ぶち込まれたボスを奪回するレジスタンスの活動が再三行われたのだろうか。
それにたいしてガルバディアは
武器をそろえ防戦するだけではなく
地下に潜ってやり過ごすことを考えたらしい。
なるほど。ガルバディアはミサイルを実用化している国だから
つめかけたレジスタンス軍団が「刑務所どこよ?」と慌てふためくところを
ミサイルで一網打尽にできるってわけか。
ほんとに大した国である。


そこまで説明を受けたところでふたたび銃撃が始まった。
また新たな射手が補充されたのだろう。
アーヴァインが棒立ちで何人もの狙撃手と互角に打ち合っている。
弾に当たらんのか。なんてヤツだこの男。
アーヴァインのアドバイスで三人ずつに分け、ヒャダルコたちは最上層へ向かうことにした。
一方でアーヴァインたちは最下層へと急ぐ。
そしてそれぞれが同時に最上層、最下層に到着したときヒャダルコたちの目の前に敵が現れた。
しかしパルプンテがたまを発射したらドローを試すヒマもなく蹴散らされてしまった。
師匠は持っていなかっただろうなあ。
そこにアーヴァインから連絡がはいる。
「お〜い、お〜いってば」
なんと、アーヴァイン組の脱出計画は
最上層に到着したヒャダルコたちの協力がなければ成り立たないものだったらしい。
だったら最上層で待ってろって伝えろよ……。
ヒャダルコたちが先に行ってたらどうするのよ」
先生の言葉も呆れていていつもの気迫がなかった。
しかしアーヴァインは幸運だったらしくその声は3人に届いていた。
「聞こえてるぞ」
アーヴァインの指示通りに彼らの乗るコンテナに移動許可を出してやった。
それにしても、詳しいじゃないかアーヴァイン。
設定的に(レベルが同じだった)お前がキロスのはずだから
D地区収容所で働いたことがあるなんてオチはつかないだろうに
よくここの構造を熟知しているじゃないか。
あるいは初めからアーヴァインは皆を助けるつもりで
いろいろと調べていたのではないだろうか。
そこを愛嬌と幸運といやな性格だけで乗り切ってきた水色の悪魔に
顔をひっかかれて急かされたからこういう危機一髪の脱出になってしまったのであって
もしかしたらパルプンテがおとなしくしていたら
華麗に脱出できたのかもしれない。
まあ、このやさ男が過剰にカッコイイと腹が立ってくるので
階段から蹴り落とされるくらいがちょうどいい。


D地区収容所は三つの建物が橋で連結されている。
アーヴァインたちには上昇の許可を出したから
一足先にもう一つの建物に移動して拠点を作っておこう。
そう考えて渡り始めた橋が建物に収納されはじめた。
え? もしかしてもう潜るつもり?
どうやらそうらしい。パルプンテとゼルは先に橋を渡りきったが
こういうときはなぜかしんがりを勤めるヒャダルコの足場が全てなくなってしまった。
残るは橋の骨組みだけ。そこをつたって、にじり寄る動きでなんとか脱出を目指す。
ぎりぎり収容所が地面に飲み込まれる直前にヒャダルコも建物の中に避難することができた。
アーヴァイン組はまださきほどの建物の中だ。でも今はばらばらでも見つからないようにしているしかない。