さて、本題だ。
「魔女イデアのことを教えてください。学園長の奥さんだと聞きました」
お前、ずばりだなあ。
パルプンテと付き合うようになって直球の強さを学習したのだろう。
それは見事に奏功しシドはその一撃でとりつくろうことをあきらめた。
イデアは子どものころから魔女でした。私はそれを知りながら結婚しました」
魔女というものがどうかわからないが、ヘルプを見る限り
「力の拡散を避けているらしい」
とある。それはつまり、魔女の力の授受は遺伝にはよらなかったと示している。
子どもが生まれるかどうか、生まれた子どもが成長するかどうかは不確実である。
そんなものに魔女の力の保存を頼ったとしたら、確実を期して子どもを多く作るはずだ。
拡散を避けるためには遺伝によらず教育や、あるいは師匠のようにドーピングすることで
魔女の力を移せる(分け与えられる)と考えた方がいい。
子どものイデアが自ら選んだのか、魔女に見出されたのかは知らないが
子どもであったらその奇跡の力をともだちに見せてもおかしくはない。
長じればさすがに魔女を知りその力を隠すだろうが
同じく魔女を知っても変わらず好いてくれたシドを選ぶのは当然に思える。
と、待てよ?
イデアは誰から魔女の力を受け継いだんだろう。
常識的に考えたら前回の魔女戦争で西の大国エスタを支配したアデルだが
試算してみる。
ガーデンが設立されてからを、計算しやすいところで15年とする。
その当時のシド学園長の年齢を、これまた計算しやすいところで20歳とする。
とすると今のシドは35歳である。見えないが。
イデアの年齢も35だと仮定すると外見年齢と一致するからそれを採用すると
約30年前にはイデアは魔女だったということだ。
つまり、30年前〜18年前にはアデルとイデアという二人の魔女がいたということになる。
力の拡散を避けるといいつつも、同時代に二人並び立つこともあったわけだ。
もしかしたら、事故死を懸念して常に数人作っておくのかもしれない。
だとしたら、イデアに対応する別の魔女もどこかに隠れているのかもしれないな。
いま考えてもわからないことだけれど。


学園長の話は続く。あのころは幸せだった、と学園長は懐かしげに振り返った。
「二人で力をあわせて働きました。とても幸せでした。
 ある日、イデアはガーデンを作ってSeeDを育てると言い出しました」
??
それにしては、あのイデアはSeeDについてほとんど知らないようだったのだが。
とにかく話を聞こう。
「その計画に私は夢中になりましたがSeeDの目的だけが気がかりでした。イデアとSeeDが戦うことにならないかと。
 イデアは笑って言いました。それは絶対にない、と」
しかし実現してしまった。そのころのイデアには道を踏み外さない自信があったのだろう。
何が彼女を変えたのか。
そして、どうしてSeeDのことを忘れてしまったのか。
ヒャダルコじゃないが、わからないことがどんどん増えていく。
魔女に対抗するための存在としてSeeDを作ろうと決意したのは魔女であるイデアだった。
自身が魔女だから、その危険さも熟知しているのだろうか。
最初に自信があったように、彼女がSeeDをもって対抗しようとしている魔女はイデアではない。
魔女の危険さと同時に心の弱さを知っているイデアはあるいは
自分を含めた全ての魔女に対する抑止力としてのSeeDを目指したのかもしれない。
オダイン博士が開発した師匠の力に目をつけ
特別な人間ではなくても訓練次第で擬似魔法ではない強力な魔法を使える手段をひらくことで
魔女の専売特許であり恐怖の源泉であり、魔女の自信の源でもある魔法の力をくじく。
あなたが第二のアデルになるのなら、なってごらんなさい。
でもバラム・ガーデンの師匠たちはあなたの前に立ちふさがりますよ。
それがなかったアデルですら、ガルバディアの通常戦力の前に敗北を喫したのだ。
そこに曲がりなりにも自分たちと近い師匠の力が加わったらどうなるか。
魔女の頭を冷やすだけの迫力はあったと思う。
じゃあ、どうして他でもないイデア自信が覇権を求めたのか。
自分が道しるべを与えたSeeDについてほとんど知らなくなっているのはなぜか。
二つ仮説を立ててみた。


1)は『イデア別人説』である。
偉大なるセルフィ閣下が言ったように「皮をベリベリはいで」と同じようなことを
誰かがしたのではないだろうか。
催眠術とか、オカルトっぽくなるけど乗りうつりとか。
イデアの意識は端っこの方に追いやられていて
たまに出てきては
「あんたなんか、バラム・ガーデンのうちの子たちがやっつけてくれるんですからね!
 知らないの? うちの子たち。SeeDっていうのよ」
とかわめいていたら、乗っ取ったものとしてもSeeDってのはなんじゃいなと気になることだろう。
もうひとつは
2)『記憶喪失で万事オッケー説』である。
チュートリアルで「記憶障害」と書かれたり、セルフィさまの日記でわざわざ心配されているくらいだから
どっかできつい一発「実は記憶喪失でした〜」ってのをくらうと覚悟している。
これまで俺は、ヒャダルコの性格の原因を
「幸せだった記憶を失ったから」ということにしてその設定を活かすのではと予想していたが
ラスボスであるイデアの記憶は超強力で横暴な師匠(名前は『やすし』)のせいで欠けており
すべてはやすし師匠が悪かったのだという展開もありうると思った。
最後、ヒャダルコたちが力をあわせてやすし師匠をドローして
やすし師匠を倒してクリアになるというのはどうだろう。
いや、やすし師匠が勢い余ってシドかサイファーにさいどとりついてしまい
でもドローは一回しかできない『限定ドロー』だったから
泣く泣くサイファーあるいはシドごとやすし師匠を倒す、というのでもいいな。
とりあえず、仮説は二つです。1)の可能性は低くないと思う。


それにしても不思議なのはヒャダルコもキスティスもゼルもイデアを見覚えていなかった点である。
たとえばアパートの隣りの住人がヨーヨー世界チャンピオンだったとして
彼がヨーヨーをやらなかったら、あなたはそのことに気づけるだろうか?
よほどヨーヨーに思い入れのない人でなければ無理だと思う。
それとおなじで、いくら魔女の力を持っていても
使わなければかくすことができると思う。
自らがSeeDを作ろうと思った女性がその教育の最前線に姿を見せないものだろうか?
彼らが入学する前に何らかの理由でイデアは学園を離れたのかもしれない。
しかしサイファーだけは入学が早かったのでイデアを見知っており
だから簡単に従ったというのはどうだろうか。
いや、単純に考えると
イデアはアデルの娘で顔がうりふたつであり
アデルの顔は全世界にひろまっているから表には出られないとしたほうがいいだろうか。
師匠を使った戦闘能力も魔女に対抗する急先鋒としての立場も
育てたのがアデルの娘というのでは信用されなくなってしまうだろうから。


さて。もう一通り尋ねたけれどシドはオウムになってしまった。
これからガーデンはどうなるんだろう?
シドの計画はこうだった。
まず、漂流状態をなんとか終わらせる。
そのあとは、うるさいマスターもいなくなったことだし魔女と対抗する組織としてのSeeDにもどろう。
何しろ魔女という現実の脅威がそこにある。
バラム・ガーデンが対魔女の旗印になることができれば
秘密裏の資金援助には事欠かないだろうしさらに人材が集まってくるだろう。
シド学園長のもくろみは間違ってはいないと思う。
あとは、漂流状態をどうやって終わらせるか、だ。
またヒャダルコのめったやたら押しに期待しているのではないだろうな。