ここにも考えてもまとまらない男がいる。
エルオーネはイデアのSeeDたちの船に乗り学園を離れていったが
たぶんヒャダルコはそれを見送らなかったろう。
ぐるぐると考え続けていたに違いない。
(どうして人に頼るんだ。自分のことは自分でなんとかすればいい。
 俺は今まで誰にも頼らずに生きてきた。
 つらいこともくるしいことも飲み込んでそうやって生きてきた。
 たしかに子どものころは自分ひとりでなんて無理だったさ。
 いろんなひとに頼ってきたけど……。
 それは認めてもいい。いろんな人がいたから、今の俺がいる)
エルオーネの最後の言葉が頭の中でうずまいている。
状況は何一つ見通せない。
ガーデンは海に浮かんでいるし、セルフィたちの安否もわからない。
いままで無条件で信じられたシドはイデアの夫だったし
そのイデアにしてからが、SeeD狩りをする一方で独自のSeeDを抱えている。
さらに二つのSeeDは部分的であっても協力しているという。
自分たちを混乱させたラグナの夢も
単なる偶然でもなんでもなく、エルオーネの思惑によって見せられたものだった。
なのにそのエルオーネは何も説明することなく自分を頼ってくる。
負荷で潰れそうになるのもわかります。さらに17歳だもの。
自分は自分で何とかする。自分が巻き起こした問題だったらその悪い結果も受け入れる。
でもどうして他人の問題を肩代わりしなけりゃいけないんだ。
いまのヒャダルコは他人に問題を押し付けたりしない。
だから押し付けないでほしい。しかしその叫びは誰一人として聞いてもらえない。
レジスタンスは平気で作戦立案に参加しろと言ってくるし
仲間はとっとと思考を放棄してヒャダルコに質問しかしない
学園が迷走を始めたらわざわざ呼び出されて操作を任される。


ヒャダルコの思考は不健全に続く。
(今は一人で大丈夫。生きていく手段も身につけている。もう子どもじゃないから、何でも知ってる……
 ウソだ。俺は何も知らなくて混乱してる。
 誰にも頼らず生きていきたい。それにはどうしたらいいんだ?
 教えてくれ……誰か教えてくれ。
 誰か? 結局……俺も誰かに頼るのか?)
書いていて不毛であり読んでいて不毛だ。
基本が間違っているのだから。
人間は頼り頼られて生きていくもんだと根っこのところで開き直れなければ
一生他の人間と相容れないだろう。
どうしてこんな風に育ってしまったのだろう?
すると場面が変わった。
ヒャダルコの回想だろうか、すでに日が暮れたなかで雨に降られながら少年が立ち尽くしている。
「お姉ちゃん。
 ぼく……ひとりぼっちだよ。
 でも……がんばってるんだよ。
 おねえちゃんいなくてもだいじょうぶだよ。
 なんでもひとりでできるようになるよ」
これがヒャダルコの根っこだったのか。
これまで生い立ちがまったく描写されなかったから想像の余地すらなかったのだが
彼には姉がいたのだろう。
しかし、姉はどこかに行ってしまった。
そこで寂しくて泣いてもいいのに、少年ヒャダルコはその感情を押しつぶした。
もしかしたら貧しいために売られていったのかもしれない。
子を売らなければ皆が飢えるような事情は、ことに戦争直後のこの世界なら珍しくないだろう。
お姉ちゃんは家族みんなのために覚悟を決めて売られていく。
ここでヒャダルコが泣いたらお姉ちゃんが悲しむ。
子供心にそう感じ取ったのかもしれない。
お姉ちゃんを心配させないように、大丈夫な自分であり続けようと決心したのか。
……こういう根っこをプレイ時間40時間になろうかというところで出すのはどうよ? と思ったが
まだDisc2なんだよな。そしてこのゲームは4枚組である。
こんなもんだろうか。


とにかく。
この強力な根っこを突き崩すには同じく強力な衝突が必要だろう。
ありあまる自信をもって「世の中は頼り頼られじゃないの!」と主張できるあの青い彗星が。
ありがとう。ちゃんとパルプンテがやってきてくれた。
「またまた、おハロー」
セルフィの「まみむめも」はどうかと思うのだが
このおハローも評判悪いんだよな。俺はそんなに嫌いではないが。
眠ってなかった、と子どもみたいな言い訳をするヒャダルコ
寝言言ってたよんとひとしきりからかってから
「な、散歩しよっか」
ヒマなのだろうか、あまりに考え込んでいるヒャダルコをみかねたのだろうか。
今度は案内を頼むという依頼ですらなくパルプンテは誘った。
前回のは案内をしてもらうという目的があった。
今度はただのお散歩である。また一歩、踏み込んできてくれた。
ここは安全だから一人で行けばいい。ヒャダルコの抵抗にもこともなげに反論する。
「別に守ってほしいわけじゃないよ。
 ヒャダルコ、一人だといっつも眉間にシワよせてるよ。そんなんだから、そのキズなおらないんだからね。
 せっかくカサブタになってもすぐにぽろぽろ落ちちゃうでしょ?
 ええっと、ようするに、こんなわたしではございますが……
 一緒にいれば、ヒャダルコさまも考え込まなくてすむかな、と思ったわけでございます。
 いかがでしょう、ヒャダルコ様?」
あー、なんか感動しちゃったよ。
自分のことだけ考えている女なのかと思っていたが
すくなくとも、ヒャダルコにとって何が必要かはしっかりわかっているみたいだ。
もちろん好意もあるのだろうけど
それを、どうやってヒャダルコにぶつければいいのか本能的に知っている。
すごく不思議なのだが
どうしてパルプンテの評判は悪いのだろう?
ここまでの未熟や直球過ぎる言動は「子どもの遊びだったから」で
目くじら立てるほどのもんじゃないと思うし
この場のこの気づかいはすごく優しいいい子じゃないかと思うのだが。
まあ、この会話がパルプンテの好感度における瞬間最大風速である可能性は否定しないが。


このありがたい申し出に対しての選択肢が出てきた。調子を合わせるか、ばかばかしいと切り捨てるか。
まだ後者かなーと思わないでもないが、ここまでしてもらって拒絶したら最低である。
お父さん許しませんよ。
ラグナの夢に現れては戦闘シーンを蹂躙してきたヒャダルコである。
ここで俺に選択肢を曲げられても文句は言わないはずだ。
ということであわせることにする。
「はは〜っ! ありがたきしあわせ!」
いい奴だなあ、パルプンテは。
とここで本日のプレイはおしまい。
ちなみに訓練施設の怪物がスリプルを吸い取らせてくれたので
とりあえず300ほど集めておきました。これは今のところ店で買える道具からは精製できないのだ。
そろそろステータス防御ができるので、いずれは一人100ずつ集めようと思います。