学園長に報告しよう。発電エリアの階段をとことこと登っていったら
息せききってF.H.の住人が降りてきた。
「ガ」「ガ」「ガ」「ガ」
ガンダムが大地に立った〜!」じゃなくて
「ガ」「ガ」「ガ」「ガ」
ガキの使いやあらへんでに爆笑問題出演〜!」
でもなくて当然ガルバディアだろう。この世界のガ行を独占しているのガルバディアだからな。
それにしてもいいタイミングで展開してくれるというか
学園が漂流しているあいだも奴らはきちんと働いているのだな。
ヒャダルコは下っ端だけど、ちょっと焦るぞ。
シド学園長、ちゃんと焦ってるか?


ガルバディア兵の襲来を信じたくないという風情のドープとフローであるが
実際に武装して駅からやってきたらしい。
学園を追ってきたのだろうか?
「大丈夫、話せばわかる。私はデリング大統領とは知り合いなのだ」
そうなのか。
おそらくここは西の大陸の東の果てだろうから
ガルバディアからは、いざ対エスタの戦争を開始する時のために
修理と補給の要請をしていたのかもしれない。
しかし最新ニュースは得ていなかったようだ。
「デリング大統領、死にました。ガルバディアは魔女が支配する国になっています」
驚くふたり。フローがわらにもすがるように言った。
「大丈夫よ、魔女だってわかりあえるわ。ねえ?」
……知るかよ、そんなこと。ヒャダルコは胸の中で吐き捨てた。
自慢じゃないが俺は何も知らない、と。
面白い子だなー、ヒャダルコは。


とりあえずこの腑抜けたちは放っておいて駅に見物に行こう。
するとフロー駅長が追ってきた。
老女なのにヒャダルコたちのかけっこに追いつくなんて立派なもんだ。
「ここに来るガルバディア軍はあんたたちを狙っているんだろう?」
それは本人に聞かないとねえ。
それともあんた、自分たちの立地がエスタに対する戦略的要地だということに気づいていないのか?
「あんたたち責任取りなさい!」
えー。
その流れはいやだよ。
ガルバディア軍の目的をまずはっきりさせてバラムが原因だったらそりゃ退治する。
でも、F.H.占領が目的である可能性は同じくらい高いんだから、その場合は
「頼むから退治してくれ」と言わせたいところだ。
これこそ即答してはいけない質問だぞ、ヒャダルコ
しかし答える前にドープ駅長もやってきた。
「フロー、彼らに任せてはいけない。バトル抜きではなにもできまい」
お前らは戦時には何もできまいが。
「話し合えばわかるさ」
駅長は行ってしまった。それがいい、それが。俺たちは高みの見物と行こう。


前に訪れた時は平和で猫たちがたむろしていた駅前広場はすっかり焦土と化しており
中央でドープ駅長がガルバディア兵と話していた。
「助けるの、迷惑かもね」
キスティス先生が言う。確かにいまは戦いは行われていない。
ガルバディア兵の目的がガーデンならば問題はないだろう。
ちがう理由であっても、ドープが収められるならヒャダルコたちの存在は邪魔である。
身を隠して話を聞いてみよう。
「……だから、何度も言ったろう? この街にはエルオーネなんて娘はいないんだ」
エルオーネ?
だって、エルオーネはイデアのSeeDが連れて行ったじゃないか。
つまりガルバディアの魔女イデアと、イデアのSeeDは別の意志で動いているのか?
おいおいイデアって何人いるんだよ。
これで学園に戻ったら、シド学園長に
「君はわたしの奥さんのイデアと魔女のイデアが同一人物だと思ってたんですか?」
とか言われちゃうのか?
ともかくガルバディア軍の目的はエルオーネの確保だった。
駅長の釈明も聞かず、ガルバディア兵は街に火をつけると脅す。
「娘がいてもいなくても街には火をつける。イデア様の命令だからな」
すがりつくドープを兵士はつるしあげた。貴様からいくかああ〜ん?
話し合いの時期は過ぎた。助けよう。