F.H.に対する理解も深まった。ヒャダルコもいろいろ考えた。
満足した気分でバラム・ガーデンに帰ろう。
それにしてもアーヴァインはどうしてここにいるのだろうか?
ゼルとセルフィはSeeDであり、どちらかが説明をしているのだろうとわかるが。
ああ、ふたりともに説明能力に問題を抱えているから
ふたりがかりでシド学園長に説明しているのかな。
でももしかしたら、バラム・ガーデンにとって予期せざる客であった彼には
まだ部屋が用意されていないから休めないのかもしれない。
なんといってもこのところの魔女討伐ならびに内紛で
空き部屋はたくさんできただろうが、それはやっぱり不動産屋としても説明責任のある部屋のはずだ。
前の住人の遺品も荼毘にふさないといけないし。
しかしいま、学園にはその人手がない。
なぜならもっとも勤勉だった生徒にしてからが「海を見ていたら勉強する気がなくなった」くらいなのだから。
より正確に言うと、だれもその仕事をしたがらないのだ。
困ったシュウ先輩はセルフィに相談しただろう。
そしてセルフィは何も考えずにアーヴァインに言ったはずだ。
「あんな、アーちゃん。いまあんたの居場所この学園にないねん。
 ちょっとヒャダルコと遊んで来てや」
颯爽と現れながらも「くよくよする男No.1」をかっさらったアーヴァインは当然ショックを受けただろう。
でも気丈に笑ってヒャダルコを迎えに来たのだ。どいつもこいつもいい奴だ。
アーヴァインが直して欲しいもの、というのはセルフィとの友情なのかもしれない。
でも、F.H.の住人は話し合い至上主義者だからな。
「ふたりで話し合え」で終わってしまうだろう。


爺さんのいた場所にはアレイズがあった。
アレイズ、いまいくつ集まっただろう?
そういえばレイズとアレイズはまだ精製できてないな。
ケアルガがあれほどHPを高めてくれたんだから
次のHPドーピングはレイズ系しかないと睨んでいるのだけれど。
のこのことついてくるアーヴァインにヒャダルコは疑問を持った。
お前さん、どうしておいらについてくるの?
とはいえ、一緒に爺さんの話とか聞いてるわけだが。
そしてもうバラムに戻るだけなのだから、いまさら聞かれてもアーヴァインも困るだろう。
それでも訊いたのは
ついてくるアーヴァインがずっと、何か話したそうにしていたのだろう。
「セルフィが落ち込んでるんだよね〜」
やはり相談事があったのだ。
なんだろう? 無事生還できて、それでもまだ心配事があるのだろうか?
ってアホか、オレは。
いくらなんでもトラビア・ガーデンの安否が伝わっているのだろう。
そしてもちろんミサイルは命中したのだ。
あー、かわいそうに。
でも、落ち込んでいたってヒャダルコには何もできないぞ。
時計台でお前さんはヒャダルコに支えてもらったかもしれんが
基本的にこの子はまだ未成熟なんだから
そりゃ支えようとがんばればヒャダルコの経験値にはなるけど
セルフィのことをおもうとパルプンテあたりに任せた方がいいんじゃないか。
しかし、アーヴァインにとってパルプンテ
「アイツわがまま言う オレひっかかれる
 アイツけとばす オレ階段落ちる
 アイツ言いふらす オレ立場なくなる」
という、人間の姿をした魔王に思えているだろうから
そういう発想はできないのだろう。
バラム・ガーデンになじみのないアーヴァインのことだから
カドワキ先生という特効薬も知るまい。
残るはゼル、キスティス先生、そしてヒャダルコである。
ヒャダルコかー。
まあ消去法ならそうなるな。


「あんた、みんなのリーダーだから元気づけてやるのも役目のうちだろ?」
お。予言しよう。
ヒャダルコ、お前は次に(頼んでなったわけじゃない)と思う。
あれ? 予想が外れた。アーヴァインの言葉は続く。
「あんた、そういうの苦手そうだからさー
 僕が力を貸しましょーってわけ」
そうだよ。
お前がいたじゃないか。
お前がセルフィを励ませばいいじゃないか。
最初の接近遭遇時ではセルフィお前にドキドキしてたんだから
うまくなぐさめてやってくれよ。
そしてまたもや予想を覆された。
ヒャダルコの返答は
「セルフィ、どこだ?」
というものだったのだ。リーダーであることを受け入れたあきらめかもしれないけれど
どうも、自分でもセルフィのために何かできる、何かしてやりたいと
思ったのではないだろうか。
そうならお父さんうれしいな。
でも励ます作戦立案は
アーヴァインに従ってもらいたい。
適材適所という言葉はあるのだ。世の中はやる気だけじゃないのよ。
アーヴァインが適材だとはいわないが
お前はきっと不適材だ。


セルフィは学園祭のステージにいるらしい。
学園祭実行委員長だものな。
はげますついでに、お花のアイコンをやめるように諭してみようか。
アーヴァインがF.H.のクレーンを歩きながら驚いた。
「なに? 修理に入るってこういうことをいうわけ?」
そっか。アーヴァインはシド学園長の使いでF.H.の担当者にお願いしますを告げたあと
そのままヒャダルコを待っていたから、どう修理するか知らなかったのか。
「小さな工具でコツコツやると思ったのか?」
ヒャダルコは動じた風もない。周りで起こること目に映ることを受け入れ続けた10年以上を過ごした男だ。
女と見れば声をかけてきた君とは、感受性のランクが違うのだよ。下に。
「こういう事には、たのもしーのね。うちの班長……」