さて、セルフィを慰める前にアーヴァインをいろいろ案内してあげよう。
教室で、そのセルフィが管理する文化祭のページを見る。
お知らせには、今回はダメだったけどという言葉が書かれていた。
え? いろいろなドサクサのあいだに文化祭として設定されていた日時を過ぎちゃっていたのか。
でもそれどころじゃなかったしな。
とはいえ内紛で生徒間にわだかまりは残っているだろうから
文化祭で発散できたらよかったのにな。
などと、ヒャダルコは委員会じゃないから無責任なことを考えます。
お友達コーナーでは、セルフィに友達ができたと書いてあった。
よかったよかった、って班長ヒャダルコ
あんな無愛想な彼も友達に設定してもらっていたのか。
いい子だなあ、セルフィは。
そのコーナーはセルフィの友達に書いてもらうらしいけど
ヒャダルコが拒否することはもう確定らしい。
パルプンテの助力を頼んで「書いてや!」「命令よ」「書いてや!」「命令よ」「書いてや!」「命令よ」
とコンボをかければ書くと思うのだが。
でもまあ、読んだ人が爆笑間違いなしのコントになるか
自殺者続出のダウン系ドラッグになるかは賭けなので
大事をとったのだろう。


で、誰に書いてもらったかといえば、当然ゼルかアーヴァインだろう。
何しろガーデンに戻った直後のこの怒涛の更新ラッシュは
あの機械の腹の中でせっせと書き溜めていなければできないことだ。
だから、あの機械がガトリング砲をぶちかましてくれたのも悪意があったわけじゃないのだ。
エンターキーがガトリング砲の発射ボタンを兼ねていたのです。
改行するたびにぱらららららー。
改行するたびにぱらららららー。
そりゃ、打ちまくるよ。セルフィくらいの年齢だと改行が多い文章を書くもんな。
いや、俺もこの日記に限っては人のことを言えませんね。
そしてやはりトップバッターはアーヴァインでした。
さらっと「かわいいセルフィの頼みだから」と
セルフィ査定を稼ぎつつ、学園生徒の大半を占める「転校生であるセルフィを知らない男子生徒」に
「かわいい女の子のために文化祭に協力しろや」アプローチをするのはさすがガルバディア1のスケコマシです。
「僕はガルバディアガーデンから個人的な事情で勝手にこっちに来たんだ」
「すっかりなじんだと思ってる」
「かわいい女の子が多くて楽しい生活が期待できそう」
どうやらセルフィには「落ち着いてからアップする」という設定だと聞かされていたようで
バラム・ガーデンに受け入れられてしばらくした設定で書いてくれている。
でもまだアーヴァインには部屋も与えられていない。
おそらく転入の手続きすら終えていないのではないか。
でもセルフィは、はやくアップしたくて間違ったんだろうな。
あるいはFTPソフトでフォルダ指定してアップロードしちゃったんだ。
まあ、早くなじめ、アーヴァイン。
かわいい女の子はいるぞ。シュウ先輩とか三つ編み図書委員とかな。
その日記のあとにセルフィのコメントが付け加えられていた。
(まあ、根はいいやつだと思ってるんだけどどうなのかな〜)
あーあ、だめだって! おなじ「かわいい」っていう形容詞を他の相手にも使っちゃ。
アーヴァイン君、セルフィ査定-3です。


お次はセルフィの日記である。
これは機械の腹の中で書いていたことなのに、ガーデンにとんでもないことが起きていると予想している。
とはいえミサイルが発射されてしまったのを見ているからな。
ガーデンが跡形もなければその日記に意味はない。
日記が日の目を見るのなら、何らかの手段で直撃を免れた/耐え切ったということだから
このくらいの予想は可能だろう。
さて、初任務をセルフィの目から振り返ってもらおう。
「最初の任務はティンバー。
 詳しいことは秘密なんだけど、この任務、はっきり言って失敗でした〜」
身も蓋もないな。そのとおりなんだけど。
「で、この任務の最中にアクシデント発生!
 魔女が現れたの! 魔女ですよ、魔女!」
魔女が登場した時に居合わせたのはアタシたちなのよと
ほこらしげに小鼻をひくつかせる小動物が目に浮かぶようだ。
かわいいなあ、セルフィは。
「(ガルバディア)ガーデンの雰囲気はこことは違ったよ。
 なんだか、軍隊とか軍人とか、そういうことを感じさせるガーデンだったなあ」
みんな他のガーデンのことを知りたがるだろう、とコマセだけは撒くものの詳しくは書かない。
知りたかったら友達になって質問して! 「まみむめも」と言って!
なかなか策士ですね、閣下。


へええ。
セルフィの日記の中で、彼女は魔女戦争を
「私たちが子どものころに終わった」と書いている。
詳しく年表を作らないとわからないけど
XX年前 F.H.建設
XX年前 魔女戦争勃発
20年前 エスタ、ウィンヒルへの最後の侵攻。
19年前 ガルバディア、ティンバーへ侵入。最初のラグナの夢。ジュリア、ラグナと出会う。
     二度目のラグナの夢。ラグナ、セントラで行方不明になる。
18年前 三度目のラグナの夢。ウィンヒルで復活。エルは4歳くらい?
     ジュリア、Eyes on meで歌手デビュー、カーウェイ少佐(当時)と結婚。
     キスティス、サイファー、シュウ誕生。
     ティンバー、征服されガルバディア領となる。
17年前 魔女戦争終結。魔女アデル、行方不明に。エスタの情報封鎖開始。
     デリング、ガルバディアの終身大統領に就任。
     電波障害はじまる。
     ヒャダルコパルプンテ、セルフィ、ゼル、アーヴァイン誕生
13年前 サイファー、キスティス、シュウ、入学可能年齢に達する。
12年前 シド&ノーグ、バラム・ガーデン設立。
     ジュリア、交通事故で死亡。
     ヒャダルコ、セルフィ、ゼル、アーヴァイン、入学可能年齢に達する。
03年前 キスティス先生、SeeD認定試験に合格。
01年前 キスティス先生、教員採用試験に合格。
00年前 ヒャダルコ、ゼル、セルフィ、SeeD試験に合格。
     キスティス先生、教員をクビに。
     ガルバディアに魔女イデア登場。デリング殺害される。カーウェイ大佐実権を失う。
まだ大まかな時の流れしかわからないけど、頭に入れておこう。


読み続けると、D地区収容所のことになった。よっぽどヒマな時間があったんだなあ。
「リーダーが拷問されたりいろいろあったんだけど」
……もうちょっといたってやれよ。
あとのほうで(と〜ってもよくやってくれたよん!)
とフォローしてくれているけどさ。
ただ、セルフィのこのフォローは
ヒャダルコにとってあの、ミサイル阻止のためにメンバーを分割する、命令以外の行動をするという決断が
『がんばった、おれちょうがんばった!』
っていう種類のものだとわかってくれてるみたいだ。
日記はミサイル基地でのできごとにうつる。
「基地内のミサイル制御用コンピューターを操作して、ガーデンを守ろうと思ったんだけど
 ……けっこう危なかったんだって?」
いや。
俺の知っている限りでは、自力で動く学校なんて
炎の転校生』の大陸学園とバラム・ガーデンくらいなものだ。
それほどのウルトラCで切り抜けた危機は「けっこう」じゃないぞ、セルフィ。
でもまあ、結果オーライならそれでいいという考えには全面的に賛成だが。
生き延びた経緯は想像通りだった。
あのマシンの中に乗り込んで、でも出られなくて
そうこうしてるうちにF.H.まで運搬されたのだということ。
「なんかヒャダルコたちとのバトルになっちゃって……。
 ごめんね、あれは攻撃してたんじゃなくて
 外に出ようといろいろ試してたんだよ! ほんとだよ!」
まあ、「エンターキーと発射ボタンが同じだったの! 日記書かないわけには行かないじゃない?」
と言われるよりはマシか。


セルフィの退屈ここにきわまれリ。
「ラグナ様ページ」というものができていました。
学園サーバーの私物化もここまでくるとたいしたものだ。
早速読んでみよう。
「うまく説明できないご縁で知ったラグナさんを紹介するページです。いやいや、ラグナ様と呼ばせてもらいましょう」
ほんとに面白いな、このゲームの登場人物はどいつもこいつも。
「ラグナさまはティンバー・マニアックスという雑誌に記事を送りながら旅をしていたみたい」
やはりキロスのお世話になって、編集長と面会したのだ。
いくつか古い雑誌を見つけたけどアイテム欄で中身を確認できないんだよな。
それをここで見せてもらえるのか。
なるほどなるほど。
ラグナの足跡は、あのみじめな敗走をしたセントラ遺跡、バラム・ガーデン、そしてなぜかエスタのものもあった。
こういう記事の場合、都市名を示すだろう。ならばエスタとは首都のことではないだろうか。
しかしラグナはエスタの一地方であるセントラでみじめな敗走をしてから
軍には所属していない。
つまり、ウィンヒル以降にエスタの首都に言ったと考えるのが自然である。
しかし魔女戦争が終わったあとはエスタは情報封鎖をしている。
観光客が平気で入り込んで写真を持ってこれるならそれは情報封鎖とは言わない。
とすると、ラグナは危険を冒してエスタに侵入したのだ。
それで悲しげなエルオーネの言葉もわかる。
やっぱりレインが感じ取ったように、ラグナはウィンヒルの暮らしにはなじむことができず
ティンバー・マニアックスに記事を送る記者となったのだろう。
情報封鎖をしている国は二つのことに意識を尖らせる。
一つは情報封鎖そのものであり
もう一つは、きちんと封鎖できているかのチェックである。
マニアックな雑誌だとしても、エスタ首都の様子が掲載されたとばれる可能性はある。
俺が昔一度だけお邪魔したちょっとアンダーグラウンドなお店では
あらゆる雑誌を講読して自分たちの記事が載っていないかチェックしていたほどだ。
エスタ首都の写真とラグナという名前が一緒に出てしまった以上
エスタ諜報部にとってラグナはブラックリストの一番上になるだろう。
記事を追って分析していけば、つぎにラグナがどこに現れるのかヤマをはることができるはずだ。
そして顔はばれてしまっている。
ラグナはエスタに殺された可能性が非常に高いと思うのだが。
最初は笑わせてもらったのに、最後はなんか後味が悪くなってしまった。