予想通り、ラグナの夢だった。
それも、今度は誰が誰に乗り移るか選べるのだがなんとウォードが復活していた。
久しぶり、ウォード。元気だった?
のり移りだが、ゼルは当然ウォードに入ってもらって
ラグナ様大好き! のセルフィにキロスに入ってもらった。
準備が整うと、滑稽なラグナのテーマに乗って三人組が現れた。
三人とも私服なのだが、雪がちらほら降っているというのにラグナは袖をまくりあげ
ウォードにいたってはタンクトップである。元気なことだ。
それにしてもここはどこだろう?
いくらなんでも季節が冬だったらウォードはともかくラグナは厚着をするはずだ。
ということは、唐突に雪になる大陸として有名なトラビアかもしれない。
とにかくどこだかわからない山奥でラグナは怒っていた。
「なんで俺がこんなことしなくちゃならないんだよ!」
キロスは冷静に金がないからだと指摘する。
話を聞いたところ、ラグナが分不相応にホテル泊まりを選んだ結果
路銀が足りなくなったらしい。
確かにティンバー・マニアックスに載っていた通り
ラグナのホテル好きは有名である。
さて、どんな仕事をさせられるのか。
昔とった杵柄で傭兵家業かと思ったが違い
「でも、オレ、役者なんてできないって!」
なんと役者である。緊張すると足がつる人間にそれをさせるのはどうなんだろう、キロス。
もちろんそれは説明しただろうが押し通されたのは
ラグナの外見のイメージがそれに相応しかったのだろう。
どんな役だろう?
そして期せずして役者なんかやられたヒャダルコはどれだけぼやくことだろう?


ラグナが着せられた衣裳は、中世の甲冑を思わせるものだった。
共演の女性は魔女の役だという。
もしかして、これが『魔女の騎士』か?
サイファーの卒業後の進路か?
サイファーの人生を歪めたのは実はラグナだったのか?
父親に人生を歪められて、息子にそれを摘まれる。
親子二代にたたられるサイファーが哀れでしょうがない。
どうも今回のシーンは、魔女とそれを守る騎士がドラゴンと対決するらしい。
不思議なのだが、人間は魔女をどういう目で見ていたのだろう?
ラグナなんかを役者に抜擢するスタッフたちが、実はエスタやガルバディアの人間でしたとは思えない。
つまり、彼らはトラビアの人間だろう。
トラビアは、ガルバディア vs エスタの東西両巨頭の対決に巻き込まれなかったのだろうか。
地理的にも、どちらがどちらに攻め込むにせよ絶好の橋頭堡になるだろうから無事に済むとは思えないのだが。
ただ、トラビアは国民のほとんどがトラビア・ガーデンの関係者というくらい
国の規模が小さく、おそらく定住の都市はないだろう。
実際にトラビアで見かけたのはガーデンの廃墟とシュミ族の村だけだった。
うま味がないくせに風雪で過酷だからどちらも戦場に選ばなかったのかもしれないな。
だから、魔女に対する憎しみに根ざした恐怖がない。
戦争が終わって数年経てばこういう映画を作る酔狂も現れるのだろう。


ドラゴンの着ぐるみ担当がいないというので、キロスとウォードが選ばれた。
どこまでも安上がりな撮影だ。
こんなものに子どものサイファーは心を奪われたのか。
俺がいまこの年になって絶対観るまいと思っているものに
初期のゴジラ映画やウルトラマンがある。
たぶん、いま見たらあまりのチャチ、大根、ご都合主義に幻滅して
あの頃のトキメキが裏返りダメージを受けるだろうから。
サイファーにも、今になって魔女の騎士のビデオを見せてはいけないんだろうな。
夢は夢のままでそっとしておくのが美しい。
とにかく現代日本で言うところの自主制作映画レベルの撮影のために
高みの見物を決め込んでいたキロスとウォードは
着ぐるみ役を引き受けて準備のために歩いていった。
そして、怪物の咆哮と
「う、うわーーーーーーーーー」
というキロスの絶叫。
キロスが殺られた!
どうやらラグナは予期せずドラゴンスレイヤーになるらしい。