棒読みの魔女が「騎士さま邪悪なドラゴンより私をお守りください〜〜〜〜」と助けを求めると
研修の時を思い出しながらラグナはガンブレードを振った。
何度でも言うが。
ほんとにこんな映画に子どものサイファーは心を奪われたのか。
そうなんだと言われたらその通りだが
かえすがえすも哀れなりサイファー。
でもまあ、ここまでは学芸会でもこれからが違うことを、テレビの前の僕らだけは知っている。
共演は多分ほんとのドラゴンになるはずです。
「なんというリアルな動き!! すごいぞキロス君!」
そりゃリアルさ。本物だからな。
しかしそんなことに気づかずに監督・魔女・ラグナはドラゴンを出迎えた。
(マジ、キロスとウォードのやつ気合入ってんな。本物そっくりじゃねえか)
感心しながらラグナは剣を構えたが、それはサイファーの構えとまったく同じだった。
わずかな可能性として
サイファーが影響を受けたのはリメイク版のほう」
ということもありうるかと思ったが、これで決定的だろう。
やっぱりサイファー少年はラグナに影響を受けたのか……。
となると、ここでラグナがかっこ悪くドラゴンに負けるのが
将来の迷惑を摘み取る行為になると思うのだが。
本気の頭突きを食らってさすがにラグナも気がついた。
「って、これ本物じゃねえか!」
監督も驚いて悲鳴をあげる。
「道理ででっかくてリアルだと思った!!!」
本物かもしれないが
このドラゴンの空気を読む能力は大したもんだよ。
このドラゴンさえいれば、ムツゴロウさんがいなくても『仔猫物語』が撮れるんじゃないか。
とはいえ、いつまでも空気を読んでくれる保証もない。
監督と魔女は騎士に後を託して逃げていってしまった。


慣れないガンブレードでなんとかドラゴンをひるませとっとと逃げる。
正直なところ、人間とドラゴンという違いを超えて、ガルバディアのモビルスーツ兵の方が強かった。
しかし空気を読むことの達者なドラゴンはちゃんと待ち伏せをする。
このあいだ、ずっとBGMがコミカルなのでまったくピンチの気がしないのだが
これ、想像するとジュラシックパーク並みの恐怖だよな。
そんな中でも余裕を失わないのだから
三人とも妖精さんが来ていることはもう気づいているのだろう。
呼んだかね、ラグナ君。
実は殺られていなかったキロスに武器を持ってきてもらい
師匠を分配したら反撃開始である。
そういえば、キロスとラグナの特殊技は見たことがなかった。
キロスの特殊技は、相手の懐に飛び込んで
両手につけたナイフでめったやたらと切りまくるというものでとてもかっこいい。
虚弱児ぽいキロスの戦闘時の姿勢とあわせると
命削って技出してますよ! という切実さが伝わってきて非常に楽しいと思う。
一方でラグナは大爆笑だ。
榴弾を相手の足元に投げ、跳躍する。
「どこからともなく」現れたロープに片手でぶら下がり、
あとは相手の手の届かない上空からマシンガンで銃弾の雨を降らせるというものである。
技の名前「デスペラード」はスペイン語だっけか。確か無法者とかいう意味だったと思うが。
それに恥じない残虐ぶりである。なにしろ、銃弾を打ち込みながら相手を見てない。
そっぽを向いて鼻歌を歌っている。
というかどこからそのロープは出てきたんだ。
とにかく二発の特殊技を食らったドラゴンは
あっけなく一枚のカードにされてしまった。
ルブルムドラゴンのカードである。ラグナが分捕った火竜の牙とあわせて
なんだか強めの魔法になる気がするよ。


場所はトラビア渓谷らしいが
どうもドラゴンの群れの中に紛れ込んでしまったらしく
とっとと撤退することにした。
そして山頂近くで3人が見たものは
ピンク色に輝く不思議な建造物だった。
いったいなんだろう?
トラビアにこの時代にあるのはシュミ族の村だろう。
あそこに足を踏み入れたことはなかったが、ピンク色の光を利用しているのだろうか?