ヒャダルコパルプンテは実は似ている。
ヒャダルコはエルオーネおねえちゃんをエスタに連れ去られ
パルプンテはやさしかった母ジュリアを自動車事故で失った。
カーウェイ大佐も仕事一筋になる前は優しかったらしい。
それまでの二人の思い出といえば
ヒャダルコにあるのは、いつもつないでいてくれたエルオーネおねえちゃんのての暖かさ
パルプンテは、両親に抱きつき触れられている安心感である。
自立を待たず、愛情がまだ必要な時期にそれらを失うことになった二人は対照的な方法を選んで対処する。
ヒャダルコは、「こんなに苦しいのなら、こんなに悲しいのなら、愛などいらぬ!」
と他人と深く関わり他人に心を開くことを拒否した。
パルプンテは、「みんなもっと私に優しくしてよ!」
と周りから愛されようと、周りの人に必要とされようと行動するようになった。
それでも根っこは同じもので
ぬくもりだとか愛だとか、そういう「この世のどこかにあるといわれる」ものに対する飢えは抑えられない。
そんな二人の嗅覚が、同病に苦しんでいる相手を嗅ぎわけたのだろう。
惹かれあうのももっともに思える。
ヒャダルコさえ変な恐怖感をなくせば
二人は愛のインフレスパイラルを完成させると思われる。
周囲の人からすると目障りなバカップルとして
「めでたしめでたし」の人生を歩んでくれる準備は整った。
問題なのはDisc3でそれが整ってしまったことで
どうすんだ。あとDisc1.5枚分
このバカップルを見続けないといけないのか。
そう暗澹とした気持ちになったところで
思わぬ果報がパルプンテの口から洩れた。


「帰ったら一緒にいられなくなるね」
昔、コンサート会場のエロ本の近くでこの二人はこの件について話したことがある。
いつかいなくなってしまうような仲間なら、いらない。
そう我を張るヒャダルコ
未来のことなんかわからないけど、明日いなくなったりはしないよとパルプンテは慰めた。
そんな根拠なきポジティブ娘の口からこの発言。
当然ヒャダルコは面食らうが、彼女が何を言いたいのかは
エア・ステーションのスタッフが教えてくれた。
『いくつか質問がある』
現在、ルナ・ベースからの脱出ポッドは地上で回収されており
生存者たちの証言で彼らも事情を掴み始めているようだ。
そこで問題になったのは、実はラグナロクに今いるのはエスタ人ではないということだ。
それどころか、もっとまずいのが乗っているかもしれないということだ。
その点を明らかにしようとエスタのスタッフはこちらの名前を確認することにした。
一名はバラム・ガーデンのSeeDでヒャダルコ
もう一名は、宇宙空間療法が劇的な成果を見せて回復したパルプンテ
その言葉はエスタに激震を巻き起こした。


『魔女だな! 魔女が乗ってるんだな!』
あらまあ。
パルプンテはいつの間にか、まませんせいが持っていたハインの力を分け与えられていたのか。
アルティミシアイデアに見切りをつけて、強制的に財産供与をしたのかもしれない。
そうすれば、魔女ならば操作できるアルティミシアのことだから
パルプンテを操作できてもおかしくはない。
それに考えてみればアルティミシアは未来の住人なのだから
アデルの封印の機械くらいは操作できても不自然ではないのだった。
「わたし、魔女になっちゃった」
いきりたつ通信の向こうの声に怯えるように
パルプンテがぽつりぽつりと呟いている。
子どものころからの行動原理が
「もっとみんな私に優しくしてよ!」
というものだったパルプンテにとって
畏れられ、憎まれる対象である魔女になってしまうのは
想像もできないほど恐ろしいことなのではないだろうか。
何しろ魔女を好いてくれたのはこれまでたった二人しかない。
サイファーとシドだ。
ダメな二人しか、魔女を好きになるなんていう判断はしないものなのだ。
大部分のまともな人たちは自分に石を投げるだろう。
そう思うと、今のこの平穏がずっとずっと続いてほしいという
叫びも至極まっとうなものだったが
エスタからの通信は冷酷に『魔女は帰還次第封印する』と言い
いたたまれずにヒャダルコは通信を切断した。