シュミ族の村を歩きまわり、いろいろな話を聞く。
シュミ族の収入源は地下資源の採掘らしく
採掘の深度が広く深くなるにつれ、それでは生活の拠点も地下に移したほうがよくねえかと思ったのだそうだ。
その深さ、実に323メートル。
うその538という言葉を聞いたことがある。
人間はうそをつくときには、なぜか3,5,8の数字を多用してしまうのだという。
それをとっさに思い出したくらいにうそ臭い数字、323m。
いや、ありえないだろう。
だって、サンシャイン60ですら240mですよ。
それよりも深いだけ地面を掘り(つまり土を地上に運び上げ)
そこに(おそらく可動式の)居住スペースを這わせるなんて、魔女がなんだハインがなんだという偉業である。
アデルを宇宙に封印するのと同じくらい、このプリミティブな世界観から逸脱している偉業である。
いかにも何も考えずにつけました、っていう数字っぽくて萎える。
32.3メートルならわかるし、普通にスゲーって思えるんだけどな。


シュミ族は基本的に人間を嫌っているそうなのだが
一人だけ、人間を嫌っていないシュミ族がいた。
彼は外の世界にて『ツクリテ』という人間に出会い感銘を受けたのだそうだ。
ツクリテ。知らない。
まあ、どこかにいるのだろう。もしかしたら、F.H.でノーグの変身後の姿をワクワクしていたカカロット
ツクリテという名前なのかもしれない。
それにしてもシュミ族は人間を嫌っているらしいのだが
この村には人間を嫌っていないムンバもたくさんいる。
のんびりしているから労働力として飼いならしているわけでもなさそうだが、どういう関係なのか。


建物のひとつでラグナに似た像を発見した。
「この像の方をご存知ですか?」
像の製作者が驚いた。こんな場所に人間の客人は少ないだろうが、その数少ない客人がほかの客人を知っているのだから
そりゃ驚くだろうか。
「これはラグナ・レウァールという人の像です」
話によると、おそらく『魔女の騎士』の撮影後に崖から足を滑らせて落ちて、シュミ族の村で介抱されたようだ。
ラグナはほんとうに崖から落ちるのが好きだな。
彼の話は続く。
シュミ族は確かにある時期になると変身するらしい。
長老になるものはその姿のままでい続けるが
その他の者は心を反映した姿になり、大部分は燃え盛る創作熱を赤い髪に反映させたムンバになるという。
そうか。
どうりでムンバたちは我が物顔でくつろいでいると思った。ご隠居だったのか。
しかし外の世界で奴隷労働力としてのムンバが結構流通している。
すくなくともエスタとガルバディアという大国で使用されている。
これはどういうことだろう。
ムンバ自体に繁殖力があるか、シュミ族の姿の時にはなかった放浪癖がそなわるというのが一番ありそうな回答だが
もしかしたら定期的な姥捨ての風習があるのかもしれない。


それにしても、ノーグは大人になって村を出てシドと出会い、それから12年経っている。
シュミ族のいう「ある時期」がそれより長いのか
それともノーグは創作熱がなかったからムンバにならなかったのだろうか。
とにかくムンバにならなくてよかったよ。
あんな奴でもボスはボス。責任者は責任者。
ある日わるだくみをしに行ったガーデン教師が見たものは、真っ赤な性悪そうな「ムンバームンバムンバムンバー!」だったりしたら
ガーデンは早期に経営破綻していたはずだ。
何しろ緊急時になって最終的には道が分かたれたとはいえ
ガーデンのあの浪費はノーグの商才で成り立っていたのだから。
ヒャダルコぽろりとムンバのことを「ケモノ」と言ってしまったら
ムンバに対する愛に火がついてしまった。
早々にヒャダルコは逃げ出すことにする。