一方ヒャダルコたちがバラムガーデンに到着したときも
ガーデンはまだそこにあった。
セルフィたちがうまくやってくれたのか
それともミサイルがまだ到着していないだけなのか。
とにかく学園長のところに急がなければ。
しかし入り込んだ学園は混乱の坩堝になっており生徒たちが右往左往していた。
そして仮面の教師が彼らを叱咤するに「シド学園長を探し出せ」と。
殺しても構わないと過激なことをいっている。
ちょっと? どういうことっすか。
状況が知りたいのだがこの仮面教師じゃダメだ。こいつら信じられない。
かといってシド学園長も同じくらい信じられない。
そうだ。保健室のカドワキ先生だ。
カドワキ先生に事情をきこう。
そう思って学園内に入ろうとしたら、ガーデンの教師から
マスター派か学園長派かと尋ねられた。
はあ? 何言ってんだお前。
戸惑っていると重ねて問われた。
どうやら筆頭株主であるマスターがシド学園長の更迭をはかり
シド学園長がそれに武力で対抗したらしい。
更迭の理由はもちろん魔女に対する態度だろう。
サイファーは嬉々としてSeeD狩りを行っているだろうし
デリングシティでは沢山のSeeDが魔女暗殺に派遣されたという話を(セルフィたちが)聞いている。
それはおそらくシド学園長の独断であり、報酬なき戦いだと思われる。
そんなものを出資者であるマスターが許すはずがないのだ。


さて、ヒャダルコはマスター派だろうか? 学園長派だろうか?
ヒャダルコの敵はサイファーであり、つまりイデアだ。
イデアの敵はシドである。
敵の敵は味方。とりあえずその考え方でいいと思うのだが
問題はシュウ先輩がどっちにつくか、なんだよな。
以前楽しそうに談笑していたし、学園長派と答えておいた。
というよりも考えるまでもないのだった。
ヒャダルコはこの覆面の教師に問題児呼ばわりされているし
キスティス先生は若年であることをあてこすられつづけてきた。
パルプンテはSeeD派遣に際してシドに大きな恩義がある。
この三人でいるかぎり、この場で学園長派以外の回答はないのだった。
すると部下を呼ばれてしまった。
といっても怪物である。
種類からして訓練施設にいるものをつれてきたらしい。
それは別に構わないのだが、教師は怪物を放つととっとと行ってしまった。
おーい。ちゃんと手綱は握ってもらわないと
この騒動がおさまったあとで回収し忘れなんていたら
ヒャダルコたちはともかく子どもたちには危険なんじゃないか。
仕方ない。あんな覆面教師の尻拭いはごめんだが蹴散らすことにする。
どうやら怪物を野放しにしたのはこれにはじまったことではなく
ガーデン中に出回っているらしい。
ゆうざん師匠のおかげで気づかなかった。


とにかく学園内部に進むと見慣れた顔を発見した。
風神と雷神じゃないか。
雷神は屈託なく帰還を喜んでくれた。
どうなってんだ、これ?
雷神が言うには、最初はSeeD狩りだったらしい。
そのSeeD狩りは学園内部で起きたものなのだろうか?
イデアが「狩るわよん」とテレビ放送でもしたのかもしれない。
そこで、SeeDのせいで重要顧客であるガルバディア軍との取引がなくなることをおそれたマスターが
学園長を更迭させようとしたのだろう。
ところが学園長が身を隠したため教師は生徒と怪物を動員して探しているのだろう。
「原因不明困惑」風神も端的に心境を説明してくれた。
それにしてもうろたえた様子がないところが
さすが風神雷神なんていう変な名前で生活する度胸を持つだけのことはある。
「風紀委員としちゃ泣きたくなるぜよ。今までの苦労がムダムダだかんな!」
それどころか学園の無秩序を憂う良心すらある。どうしてこんないいやつがサイファーの手下なのだろう。
ヒャダルコは彼らに説明した。ここは危険だ。ミサイルが飛んで来るるかもしれない。
それを聞いた雷神は当然逃げ出そうとしたが、蹴り一発で風神が止めた。
「お、おう! 一人で逃げちゃ卑怯だもんよ! みんなに知らせるかんな! 戦ってる場合じゃないもんよ!」
2人して戦いを鎮める努力をしてくれるらしい。なんていい奴なんだ。
パルプンテが走り去る2人に「どっち派なのか」と質問すると
サイファー派」と気分のいい答えが返ってきた。
どうやら彼らはサイファーが魔女の騎士になったことを知らないらしい。
サイファーはテレビに映るのがお嫌いのようだ。
でも、ヒャダルコが学園長に報告したら当然敵の情報を共有するということで
2人もサイファーの所在と所属を知るだろう。
次にあうときはたぶん敵だなあ。楽しいし、頼りになる奴らだと思うんだけど。
まあいいや。シュウ先輩を探そう。
シュウ先輩ならサイファーには煮え湯を飲まされているから
間違っても敵にはならないだろう。