図書館には学園長はいなかった。いると見せかけてここを守るように言われたらしい。
誰にだろう? シュウ先輩かな? と期待していたら
ほんとうにシュウ先輩だった。なんてこと。
ゲームなんだからしょうがないけど
ほんとに名前の出たキャラを使いまわすよなあ。
それともシュウ先輩はそんなに優秀なのだろうか
同期に神童であるキスティス先生がいるってことは
学生時代の成績は先生より下だろう。
SeeDとしての一年の実戦経験が彼女を鍛え上げたのだろうな。
それにしても先輩三羽ガラスのシュウ、サイファー、キスティスで
いちばん成績のよかったキスティス先生がいちばん地味だ。
神童もハタチすぎればただの人。
先生、ハタチまでもたなかったね。
とにかく混乱が起きた時に彼女がとった即座の指揮によって
まだ学園長は無事なのだという。
よし。シュウ先輩を探そう。


どうやらシュウ先輩の戦術は
駐車場、図書館、訓練施設、寮、食堂、裏庭、保健室と放射状に伸びるそれぞれの
どこかに学園長を隠し、相手の戦力を分断して防衛することのようだ。
しかしそれは援軍があってはじめて有効な手段である。
そうでなければ食堂はともかくあとは時間が経つほどに不利になっていく。
どこか一つが寄せ手を撃破できたら、その寄せ手は隣を攻めているマスター派を挟み撃ちにする。
そういうつもりなのだろうか。
あるいは援軍のあてでもあるのだろうか。
とにかくどういう目論見かは知らん。
ヒャダルコたちは淡々と、それぞれの拠点を攻めるマスター派を倒していった。
たとえマスター派が先輩SeeDであったとしても
あけみ師匠にお目見えかなっていないだろう。
もしあけみ師匠の生命魔法精製が学園で普及していたら
バラムの雑貨屋のテントはもっと高値をつけているはずだから。
つまり、HPではヒャダルコたちは大半のSeeDを凌駕していると思われる。
ぬくぬくと学園でカードゲームをしている奴らなど相手にもならぬわ。
そう考えていたら、訓練施設でにゃんと恐竜を呼び出された。
……でかい。
……ほえ声がうるさい。
けど、この戦いは学園長派SeeDの仲間だけではなく年少クラスの子どもたちも守る戦いだ。
これだけは逃げることは許されない。
一か八かでキスティス先生の青魔法であるデジョネーターが発動して
殴りあうことなく恐竜は次元の隙間に放り出された。助かった……。


その調子で全ての拠点を防衛したがシド学園長は見つからなかった。
しかしいくつか看過できない情報が手に入ってもいる。
まず文化祭のステージを守っていたSeeDから聞いた話では
現在、ほとんどのSeeDは学園長がいうところの『SeeDの本当の戦い』に出てしまったそうだ。
やはり金をかけての依頼ではなくシド学園長の独断だったのだ。
経営者ではないのにここまで経営者の利益に反することをするなんて
やはり魔女とシドとの間には何かある。
さらに驚くべき情報がもたらされた。
ヒャダルコのSeeD認定試験の合格者は四人いたが
ヒャダルコ、ゼル、セルフィ、あと一人は無名だった。
しかし彼には名前があったのだ。
彼の名前はニーダ、という。
ここでがんばってグイッチャルディーニとかいうけったいな名前ではないところが
彼のいいところだと思う。
それにしても一生無名で終わると思っていたが
意表をつかれましたよ。やるなあシナリオを書いたひと。
彼もまた学園長派だった。
それにしてもニーダは魔女暗殺に派遣されなかったんだな。
やっぱり新米ぺーぺーなんてそんなもんだよ。
ヒャダルコたちだってそういうゆっくりしたスタートを切ってもよかったんだ。
それがパルプンテに巻き込まれたせいでガルバディアまで飛ばされ
魔女復活にニュースに半狂乱になったシドに鉄砲玉にされた。
挙句の果てはセルフィたちは基地の自爆に巻き込まれた。
一緒にSeeD認定証を授与された四人でも
この人生の違いはなんだろう。
やっぱり世の中って運不運はあるよ。


カドワキ先生はこんな混乱の中でも変わっていなかった。
マスター派の生徒も怪我人であればみてやるし
ただひとり醒めた頭で早く終わらないかねえと思っている。
ミサイルが飛んでくることを聞かされても
なおさらこの場を離れるわけには行かないと逃げることを拒否した。
考えてみれば傭兵の学校の保健室である。
親元を離れて厳しい訓練を課せられている子どもたちにとってはまさに母親だったろう
しかし、卒業した彼らが母親に元気な顔を見せる可能性は非常に低い。
そういう日々がカドワキ先生に覚悟を決めさせているのかもしれない。
とても逃げるように説得はできない。そもそも17〜8の若造が大人に説教できるはずがないのだ。
カドワキ先生にシド学園長の場所を聞くが
シュウにでも訊かないとわからないという。とはいえ一階はすべて見て回ったから、
二階教室に行ってみよう。
それにしても、学園長派を選んでよかった。
シュウ先輩とニーダが学園長派でカドワキ先生もほぼ中立。
あと、殺しちゃまずいのは三つ編みの図書委員だけだ。
ぐっと気がらくになった。