中庭に出て驚いた。
中庭の中央に光がさしこんでいて
そこに巨大なトカゲがいる。
クビが三つあり、胴体は太い。
しきりに身悶えているのは、光にとらわれているのかな。
話しかけたら仲間になってくれるだろうか。
そんな甘い話はない。問答無用で戦闘になった。
キスティス先生が驚く。
「ガルバディアガーデンは師匠を使わないはずよ!」
なんと。こいつは師匠の一種なのか。
イデアの指示で師匠利用をはじめようとしていたのだろう。
一匹連れてきて、とりあえず素質のあるものからお目見えさせていく。
あるいは、記憶操作用に持ってきたのかもしれない。
とにかく、師匠の兵器としての利用に手を出そうとしているのならばまずい事態だ。
SeeDの少数精鋭伝説は、すべて師匠のおかげでなりたっているのだ。
ガルバディアにも使うようになられたら戦力は開くばかりである。
赤いガーデンを見つけてすぐに突入したヒャダルコの蛮勇は
結果的に好判断だったのかもしれない。
ヒャダルコはしかし、ガルバディア・ガーデンに師匠がいることは頓着しなかった。
「まあいい……俺たちがもらうさ」
師匠をどう利用しようとしたか、問題じゃない。
どうせ今日でガルバディア・ガーデンの歴史は終わるんだ。
その覚悟に満ちている。
その経緯で目の前の師匠をこちら側にお迎えすることには異論はない。


『早さの書』を一冊ぶんどってから
ヒャダルコの連続剣一発でケルベロス師匠は降参した。
さあ、名前をつけてあげよう。
ケルベロス、というのはギリシャ神話に出てくる冥界の番犬だ。
ヘラクレスオルフェウスオデュッセウスアイネイアス以外は
たしかシャットアウトされたのではないだろうか。
肉を与えられただけで沈黙してしまう昨今の番犬とは違い
立派なものだと思う。
その四人の突破の仕方だが
ヘラクレスには牙をむいたがねじ伏せられ
オデュッセウスにはだまされた。
アイネイアスは忘れた。
しかし見ものなのはオルフェウス
なんとこの犬は、侵入者に下手に出られると甘くなる性質がある。
オルフェウスが竪琴を弾いてくれた途端
番犬としての役目も忘れて居眠りしてしまったのだ。
よって『つんでれ』と名づけよう。
ツンデレの定義を勘違いしているかもしれないが
まあいい。どうせ5年後にはなくなっている単語だ。