ヒャダルコ、キスティス、セルフィ」
魔女の声が聞こえた。SeeDとひとくくりではなく、名前で呼ぶようになった。
まませんせい、憑き物がおちたんですか?
見上げると、演壇の上でイデアがぐったりとしている。
そして名前を続けた。
「アーヴァイン、ゼル。
 ……大きくなりましたね。強くなりましたね。
 この日を待っていました。
 この日を恐れていました。
 今日は善き日ですか?
 今日は忌まわしき日ですか?
 エルオーネは?
 私はエルオーネを守りましたか!?」
何を言っているんだ。ヒャダルコにはわからない。
俺はちょっと判ると思うよ。
やっぱりイデアには、別の何か(仮にアデルとする)がとりついていた。
イデアはそのアデルのたくらみを知っていたから、もしもの時のためにSeeDを生み出した。
さらに、アデルの目論見がエルオーネに関係していると知ったから
SeeDの中でも厳選したイデアのSeeDにエルオーネの保護を命じた。
そういう布石を打っていたけれど、やはり乗っ取られてしまった。
この場にいないセルフィ、アーヴァイン、ゼルのことも知っているのだから
おそらく外界のことを見えてはいたのだろう。
アデル(仮)をヒャダルコたちが打ち倒すのも見ていた。
そうしてようやく解放されたのだ。
もちろんそのことは、学園やガルバディア、ひいては世界にとって善き日だろう。
でも、自分や子どもたちの心、シドの心にとっては忌まわしき日々の始まりになる。
何しろイデアはデリングを皮切りにたくさんの人間を殺してきたし
ガルバディアと各国の間にはもう覆せないほどの憎しみが生まれてしまった。
それらと向き合わなければならないのだから。
でもまあ、善き日だと思おう。
ヒャダルコは恐らく頭を切り替えられないが
アーヴァイン、セルフィ、キスティス先生、ゼルは大丈夫だ。
そして何よりパルプンテがいるから心配はない。
さあエンディングに進もう。


ヒャダルコ!」
キスティス先生が悲鳴をあげた。
え? パルプンテが起きないの?
(……パルプンテが? パルプンテがどうしたって?)
エンディングにはならなかった。
パルプンテは目を覚まさないし、Disc3を入れろって言われたんだ。
わかってはいたが、まだ続くのか。
エンディングに進む前におかしいなと思っていたのだが
イデアから『アレクサンダー』という師匠を吸い取っていた。
まだ終わらないのであれば名前をつけてあげることにしよう。
アレクサンダーって。
名前からまったくイメージがつかめない。
小さな顔の画像を見ても、どういうものかわからない。
この世でもっとも有名なアレクサンダーは
やっぱりマケドニアの王で、東ヨーロッパと西アジアに大帝国を打ち立てた彼だろう。
二番目は……トロヤ戦争のきっかけを作った色男かな。
三番目はおそらく、息子を使ってイタリアを手中にしようとしたローマ法王
二番目以降も超重要人物には変わりないがやっぱり格が落ちるので
アリストテレスの弟子である彼から考えていこう。
とはいえアレクサンドロスのエピソードも、俺はよく知らない。
ゴルディアスの結び目と
アレクサンドロスに生まれなかったらディオゲネスになりたかった』
というセリフである。
ディオゲネスになりたかったか。あのぐうたらに。
よし、その夢をかなえてあげよう。
『ぐうたら』師匠と命名した。
あまりのこじつけにくらくらしてくる。