ラグナはほんとうにステージに上ってしまった。
すでにジュリアは演奏を終えて不審な侵入者をじっと見ている。
そのほかの客やスタッフが止めに入らないところを見ると
ガルバディア軍の兵士のご乱心は日常茶飯事なのだろう。
(ああ、こんなにラグナが近くに……)と感動に震えるラグナの頭の中で
(ほんとにやるか……)とヒャダルコが呆れている。
もしラグナの考えることや感情をヒャダルコが感じられるなら
こういうちゃらんぽらんだが楽しい嬉しいを感じる毎日を経験することは
ヒャダルコにとってよいことだと思う。
ただこのラグナというキャラは
本当に大事なところで150点をとるが
他は50点で終わるタイプの予感がすることも確かだ。
ヒャダルコがその人生を覗き見する時に
150点のタイミングが来てくれればいいのだが
ジャッキー=チェン映画のエンディングNG集みたいなものを見せられたら
ヒャダルコは却って自分の行き方に自信をもってしまうだろう。
ラグナさん気づいてますか。
いまあなたは、一人の引きこもりの今後にちょっと影響を及ぼしていますよ。
(……まずい)
(あ、足がつりそうだ……)
気づいていませんね。なにやってんだお前。
(情けない……)
すごすごと足をひきずりながら歩みさるラグナをヒャダルコは冷ややかに切り捨てた。
うちでお母さんにいつもやられているお父さん
職場でも上司にやられてました。
そんな感じですか。子どもがっかりだ。


それでもキロス&ウォードはがっかりしなかったようで
「よくやった」「作戦成功だ!」とほめてくれた。
お前たちラグナの成功を願っていなかったな。
単に楽しいものを見たかっただけなんだな。
わかっていたが、確認すると落ち込みます。
ウォード「本当にやるとは思わなかったぜ。俺たち査定+1だ」
キロス「しかし、情けない姿をジュリアに見せた。男気−3ってところか」
だめじゃん。
情けないところを見せたにもかかわらず
ラグナは落ち込まず、ただただジュリアがきれいだとうっとりするだけだった。
無邪気ないい男じゃないか。