足をつった情けない男だったのにジュリアがやってきた。
それを見てキロスとウォードは気を利かせて席を外してくれた。
ジュリアのために場所を作ろうとするも、ふたたび足がつってしまう。
しどろもどろになり考えることもまとまらないラグナには
ヒャダルコは(何も考えていないのか?)と呆れるだけだった。
でもお前のやっていることだって何も考えず外界を拒否するだけなんだが。
明らかにうろたえているラグナにジュリアは思わず吹き出し
こちらは対照的にリラックスしてソファにこしかけた。


とりあえず二人の甘ったるい会話はパスして
いきなりジュリアから部屋に誘われた。
な、なんだってーーーーー。
初めて会話する男を部屋に誘うってどういうことだ。
普通に考えると罠だ。美人局だ。
しかしラグナは逆らえまい。男ってのはそういうものだ。
そして女は同伴ボーナスを稼ぐのだ。
俺だって、罠を罠だと気づけてさえいれば
京都から帰ってくるときに車のローンくらいは完済できたと思うんだ。
部屋に? とうろたえるラグナ。
ジュリアはしかし、この場所は話しづらいという。
いや、どんなにみんなが聞き耳を立てていても
近寄って囁き声なら絶対に聞こえないのですが
それよりも部屋に連れ込んだと評判が立ったら
ファンがどんな逆上をしめすかわかりませんよ。
部屋の番号はフロントで聞いてくれと言い残してジュリアは去っていった。
(俺、夢見てるのか?
 ……これは夢だ……そう思うのが一番楽だ
後半はヒャダルコの感想だ。
(いや、これは夢じゃない!
 ……夢にしてはなんか変だ
(ジュリアがオレと話したいだと。
 ……こいつの頭の中……うるさいな
(しかも2人きりだってよ。どうするどうするラグナさんよ
 勝手にしてくれ
ラグナの頭の中で何を呟いても聞いてくれない。
切るスイッチが壊れてしまったテレビのようなものだ。
そしてヒャダルコは考えるのをやめた