パルプンテ姫に学園を案内してあげることになった。
しぶしぶのようだけど、断らないところをみると好意とはいえないまでも仲間意識は感じているはずだ。
何しろほうっておくと生まれてしまう思索の中には
SeeDの仲間であるセルフィやゼルだけではなくガルバディア・ガーデンのアーヴァインに対する
気遣いもあったのだから。
それならば、少しとはいえ付き合いの長いパルプンテに対して
親切にしてやろうという気持ちがあってもおかしくない。
まあこの姫にはコリゴリというところもあるかもしれないが。
とにかく姫にはもっとヒャダルコを刺激してもらって
この感受性の鈍い子をどうにか普通の少年にしてもらいたいものである。
その結果としてプレイする俺が苛立つような会話になったとしても
俺は逃げない! 見届ける!
たぶん見届けると思う。
見届けるんじゃないかな。
まちょと覚悟はしておけ。


それにしても、まっとうな学校に通ったのはパルプンテだけである。
他はガーデン産の戦争マシーンだからね。
パルプンテがいくら優れた軍人である父親の素質を受け継いだとはいえ
かなり体育を重視した教育ではないと
ヒャダルコたちとタメをはる運動能力は説明できない。
そう考えると読み書き、四則計算、体育くらいはあったのだろうか。
パルプンテは17歳の時点で親元を離れてティンバーにいたし
SeeDの試験は15歳から受けることができるから
「大多数が受ける教育」というのは15歳までなのかもしれない。
パルプンテが聞き上手だったら
案内される中でも自分の知る学校の説明をし相違点について「なぜ?」を繰り返すことで
バラム・ガーデンの特色を浮き彫りにすることができるだろうが
まあ、そんな知恵はあるまい。


学生寮からとことこと二人は歩く。右に行こうか? 左に行こうか?
向かって左に行くと図書館、駐車場、訓練施設があり
右に行くと食堂、保健室、学園祭のステージがある。
それにしても学園祭は実施されなかったのにステージはあるんだな。
学園祭というイベントではなくても有志のコンサートなどはあるのかな。
それとも年少クラスなどでは学芸会をしたりするのかもしれない。
ヒャダルコはもちろん「木」の役でした。
サイファーは「魔女の騎士の話をやろうぜ」という意見を皆に圧殺されてストライキしました。
ゼルは「大変だー!」っていうセリフだけの村人1で
キスティス先生はヒロインのお母さん役です。
シュウ先輩は当然ヒロインで
風神は中国人の占い師で雷神は黒人奴隷になり
シド学園長は最前列で寝ていました。
おお。ベストキャストではないですか。
彼らの活躍が目に浮かぶようです(病状は深刻です)。


ともあれ、若い娘は本より食いもんだろうとヒャダルコは右に曲がっていく。
こっちはなにがあるの? その迷いのない案内にパルプンテが尋ねてきた。
この無気力ったら、案内に乗り気じゃないかしら。嬉しくなったのかもしれない。
しかしヒャダルコの回答は
「食堂だ」
「あっちは?」
「駐車場」
こういった最小限のカロリーしか消費しない行動はとってもヒャダルコっぽいのだが
思いもかけず命令でないのに案内してくれることになって喜んでいたパルプンテはさすがに拍子抜けしたようだった。
「もうちょっと楽しそうに……。う〜ん、せめて普通に案内してくれない?」
ヒャダルコとしては普通だろうにそんなこと言われても困るばかりである。
でも、当初の彼なら「いやならやめるか」くらい言いそうなところだが
この戸惑いは、ご要望に応えてやりたいのだが手段がわからないためのものに思えた。
ひいき目すぎますか。
ともあれ、食堂に連れてきた。ヒャダルコの「普通」を見せてやれ!
「ここが食堂だ。ここで食事ができるのは当然だが、量が限られているので争いは激しい。
 中でも人気が高いのはパンだ。パンの中には人気が高すぎてなかなか手に入らないものもある
 だからこんな風に毎日毎日行列ができるんだ」
笑いが止まらなかったよ。面白いなー、ヒャダルコは本当に。
パルプンテも笑い出しているが、なにがそんなにおかしい、と当惑するヒャダルコ
いや、おもしろいよ君は。実はクラスで好かれてたかもしれない。