のっぴきならない距離まで接近したら、場面がブリッジに切り替わった。
そこに、呼び出されたヒャダルコがあがってくる。
シュウ先輩もいない。彼女も物資補給などの役目があるからいつもここにいられないのだろう。
普段はずっと、一人で航海をしてくれているのだろう。
誰か、ニーダを主人公にした小説など書いてはいないものだろうか。
誰も書いていないのなら俺が書こう。もちろん18禁で。
渡された双眼鏡で確認すると、向こうもこちらに進路を取っていた。。
「あれには魔女が乗ってるんだろ? 最終決戦か?」
そうだなあ。プレイ時間も70時間にならんとしているし
おなかいっぱいを通過してかなり経つので、もう最終決戦でいいよ。
Disc3とDisc4には実はFF12が入っているとかで。やらないけど。
「……そうしたい」
しかしヒャダルコは現実を見つめていた。もう、二枚の残りディスクから目を逸らすような子どもじゃない。


ヒャダルコは必死になって考える。
負わされた責任とはいえ、戦闘関係のリーダーになっているのだ。
やれることはやらなければならない。
しかし、あまり多くの指示を出したらみんなを混乱させてしまう。
*(自分のこと)
 (ガーデンの進路)
 (攻撃の準備)
 (守りの準備)
 (仲間のこと)
 (食堂のパンのこと)
 (年少クラスのこと)
すでにいくつか消されているが
もちろん年少クラスのことが最優先で、攻撃と守りの指示をして
遊撃隊として仲間たちは手元においておきたい。
微妙なのはこの「自分のこと」という欄だが
まさか自分語りを始めるわけじゃないよな。
指揮官の居場所、行動を知らせるんだよな。これも選ぼう。
さて。回答はこうなりました。
「こちらはヒャダルコだ。
 これは緊急放送だ。よく聞いてくれ。
 これからガルバディア・ガーデンとの戦闘に入ることになりそうだ。
 敵側にはサイファーもいる。今回の戦いで俺自身のしがらみにも
 決着をつけるつもりだ」
しまった! 自分語りだった! ガーデン査定-5ですな。
「剣接近戦検定二段以上は駐輪場で
 MG検定3級以上は2F外壁デッキでそれぞれ待機。ウォームアップを怠らないように。
 やつらはたぶんここに乗り込んでくる。
 だから校庭と正門を固めて敵襲にそなえる。
 キスティス、ゼル、セルフィ! ブリッジに集合してくれ」
あいやいやー。パルプンテとアーヴァインは呼ばないのか。
ガルバディア・ガーデンとは戦いづらいだろうアーヴァインはわかるけど
パルプンテは怒ると思うけどな。
「戦うしかできないけどよかったら一緒にいてくれ」
とは言ったものの、まだ開き直ることができないのかもしれない。
「出席番号末尾が8の生徒は年少クラスの世話を忘れるな!」
ふむ。
ヒャダルコの出席番号は何番だっけ?
ここによれば41629である。
このときは1桁目が入学年度(これは大ハズレ)
2桁目が性別
3桁目が専修かとおもっていたが、どうやら最後の桁が専修だったようだ。
8は教育学科、9がSeeD特進コースだろうか。
「ちょっと余計なこと言い過ぎかもな」
ニーダから冷静な指摘が入る。案外と大物じゃないか、お前。
「戦場ではみんな興奮気味になる。必要なことだけ的確に指示しなければ」
ヒャダルコはぐうの音も出ない。俺だって、まさかこの期に及んで自分語りをするとは思わなかった。


しょんぼりしているヒャダルコをアーヴァインの怒声が打った。
「おいおいおい! なんで僕は呼ばれないんだ〜?」
でも、いいのかお前。相手はお前の母校なのだが。
「僕だって仲間だろ〜?」
相変わらずかっこいいな、アーヴァインは。
ヒャダルコの遠慮を感じ取って、わざとおちゃらかして遠慮の必要はないと教えてやったのだ。
もちろん石の家でのアーヴァインを覚えていなかったヒャダルコのことだから
遠慮ではなくて単に忘れていた可能性もあるのだがそれは触れないでおこう。
ヒャダルコはいちばん実戦経験が濃い仲間たちに各戦線の指示をとらせるつもりである。
なるほど、それじゃパルプンテは役に立たないな。
ゼルが来たら分担を決めよう。そういうと
「あ、ゼルねえ、きっと眠ってるんだよ。もう、ぜんぜん眠ってないって言ってたもん」
「ああ、あれ?」
三人は事情がわかっているらしいが、ヒャダルコには秘密にされてしまった。
何のわるだくみだろうか。
とにかく寝てるやつを待ってはいられない。
セルフィとアーヴァインを連れて校庭の様子を見ることにする。
二つに分けるとしたら、もう一方の指示はやはりキスティス先生にお願いしなければ。
セルフィは論外、アーヴァインは学園内での知名度がない。
不安だが、消去法ではそうなる。
エレベーターで先に下りようとしたら、先生にパルプンテの扱いを聞かれた。
こういう組織戦闘で役に立つとはとても思えないので勝手に一兵士として動いてもらいたいのだが
確かにあのたまキャノンは強力極まりない。
相手が集団ならなおさらだ。
いいところで投入したいのだが。
でも考えてられない。キスティス先生に丸投げすることにした。