演台には無造作にデリング大統領の死体が捨てられていた。
怪物を影武者に使うような度肝を抜く登場の仕方をした彼も
おそらくその影武者をあやつる力自体がイデアに与えられたものだったのだろう。
20年近く独裁を続けた以上、たぐいまれなる頭脳と精神力、カリスマ性、そして体力があったに違いない。
それなのに魔女という存在に手を出したが最後
このような終わりを迎えてしまった。
J.R.R.トールキンの『指輪物語』において
「ゴクリを殺しておけばよかったのに!」というフロドの発言を
「生き物を蘇らせることができない以上、殺してはいけない」と灰色のガンダルフがたしなめるくだりがあった。
これを読んだのは小学生の時だから細かい間違いは突っ込まないで欲しいのだが
とにかくこの言葉が意識に残っている。ストーリーは全部忘れた。
人間は、その行動がもたらした悪い結果を自分でどうにかできないことには
手を染めてはいけないのだ。
師匠すら持っていないデリング大統領にとって
イデアの利用はその種類のものだったはずだ。
しかし、ながいあいだの統治者としての成功体験が冷静な判断力を奪ったのだろう。
哀れな話である。
そして思うのだが
おなじ教訓をヒャダルコたちは師匠に対して当てはめたほうがいいと思う。
何しろ記憶障害との関係があると思われるが実証されていないような技術なのだ。
もちろんゲームで許される以上俺はヒャダルコたちに師匠を使わせ続けるが
ゲーム内で彼らが師匠を捨てる日が来ることを実は祈っている。
もちろんそうしたら戦闘が楽勝ではなくなるので
俺はゲームをやめる。


演台から官邸内に入り、怪物に襲われているパルプンテを発見した。
最初のうちは優勢だったに違いない。
でもキスティス先生に師匠と一部の魔法を剥ぎ取られしまった。
それからは防戦一方だったろう。よくヒャダルコたちの到着まで生きていたと思う。
うっしゃー、死ね!
常に自らを窮地に押しやるストイックな男ヒャダルコ
連続剣をぶち込んだ。それだけで怪物は粉々になって消えた。
あれ? こいつが師匠を持っているんじゃないのか?
しかもアーヴァインはドローつけてないし!
仕方なくアーヴァインには待ってもらって
ヒャダルコがドローを試したら確かにカーバンクルという師匠っぽい名前があった。
このゲームではまほうの名前は四文字が最大だから
それ以上のものは師匠ということになる。
忘れないようにカーバンクルを吸い取ってから
今度はアーヴァインのショットを試してみる。
弾薬は、通常弾と速射弾は無尽蔵に近く作り出せるので
とりあえずは通常弾を選んでみた。
R1ボタンを押すと一発発射で、時間内なら何発でも打てるらしい。
さすがに弾薬を使う技だけあって、相手が死んだらダメージ0にして教えてくれる。
それでも気にせずうちまくってみたら6回くらいは撃てるようだった。
一発のダメージが400くらいだったから通常弾でも2000くらいはダメージを与えられることになる。
ちなみに3発目くらいでボスは死んだ。


さあ、カーバンクルに名前をつけてあげよう。
って、カーバンクルってなんだよ。どういう生き物だよ。
今までの人生でカーバンクルという単語に出会ったことがないぞ。
仕方ないのでネットで調べると
ぷよぷよ」に出てくる黄色くて耳と手足があるゴムマリのことらしい。
ぷよぷよもまた、あまり詳しくない。
というより早くストーリーを進めないので悩む時間がもったいない。
あまり考えずに『だいだげき!』と名づけた。
いま考えると『ばよえーん』のほうがよかったなあ。
でもやり直すのは面倒なのでこのままで行くことにする。
ビックリマークついてるからいいですよね? だいだげき!師匠。