目が覚めた。
ゼル、キスティス、セルフィ、パルプンテが薄暗い部屋にいる。
ゼルが身を起こしたらキスティスが「あっちの世界」かと訊いてきた。
ええ? 盗み聞きしようとしたのはゼルだったのか?
「ラグナ、元気だった?」
セルフィがすかさずラグナ様のことを聞き出そうとする。
そうそう。ラグナのこともそうだけど、パルプンテの母親の話はいま訊けるじゃないか。
しかしゼルはウォードになっていたのだった。
キロスの言葉どおり、ウォードはD地区収容所で働いていたらしい。
「元気にやっている」とキロスは言った。
しかしゼルが覗き見たウォードは退屈な日々の中で
ふたたびラグナと戦える日を夢見ていたらしい。
声を失ってキロスの足手まといになると思ったのだろうか?
それにしても、あの盗み聞きはアーヴァインだったのか。
非常によくわかる。


さて、これからどうしよっか、セルフィ
「刑務所といえば脱獄……。どうせなら派手にいきたいよね〜」
やっぱり大物だな、この娘は。つづいてパルプンテに話しかけたら
ウォードの記憶はここと一致しないか、と尋ねてきた。
「わたし、よくわからないけどゼルは『あっちの世界』ではウォードなんでしょ? この部屋、見覚えない?」
まさか広いガルバディア大陸に刑務所がここしかないわけじゃないだろうが
ティンバーでレジスタンス活動に参加してきたパルプンテにとっては
刑務所=D地区収容所であることは想像に難くない。
そして幸運なことに、ゼルはウォードの記憶がここと一致することに気がついた。
「ここはウォードが働いている刑務所だ! ウォードは掃除してたぜ!
 同じような部屋がたくさんあってよ!」
「ガルバディアには反政府的な人を入れるための刑務所があるの。私たちそこにいるんだわ!」
「魔女をおそって現行犯逮捕されたから刑務所入りは当然といえば当然ね」
ということは、逮捕されて取り調べられたあと、お前たちはどこに送られるなどの
人道的な配慮はまったくなくぶち込まれたのだろう。
とにかく
「あんまりいいことなさそ」
セルフィの言うとおりだ。心配だけがつのる。
それにしてもものに動じないな、セルフィは。


一方でヒャダルコは個室に入れられていた。
イデアにつけられた傷は残っていないようだった。
氷でできた刃かと思っていたが催眠術の一種だったのだろうか。
ヒャダルコの額の傷が消えないことからケアルだけで外傷が消えるとも考えにくい。
師匠で強化されたHPを削る戦いでは埒が明かないと
ザラキを使用したのだろう。
ヒャダルコは必死に記憶をたどった。
パレードカーから転落した彼らガルバディア兵がとりかこみサイファーがにやつきながら見下ろしていた。
思わずうめき声が洩れた。
おお。悔しさを表に出すなんてだんだん熱くなってきたではないか?
その途端個室が揺れた。
どうやら個室はカプセル状になっているらしく、どこかへと運ばれていってしまった。
脱出しにくくするための工夫だろうか。
囚人をいくつかに分散して投獄して
お互いの場所が朝に夕に変わっているとしたら
たとえ脱出のための事前打ち合わせができたとしても
相手の状況を知るすべがないのだから躊躇するだろう。